「ひとつが『患者の明確な意思』。二つ目が『患者の耐えがたい苦痛』。三つ目は『その病気に回復の見込みがない』ということ。4つ目は、『代替治療法がない』ということ。そして5つ目が『複数の医師の判断』です。これらをすべて満たしたものが、安楽死と認められます」(大槻先生)
身体的な病気の場合はまだ診断がしやすいが、深刻な精神病などを抱えている患者、さらには認知症の患者であってもこの条件が当てはまるという考え方もある。このため、明確な「耐え難い苦痛」を図る基準はどう考えるべきか、という議論も続いているという。
「現在、オランダでも、この法律が適用されるのは16歳以上です。12~16歳未満の子供の場合は親の同意が必要です。なお、ベルギーでも安楽死法は可決されています。ベルギーでは『子どもに権利がないのはおかしい』とのことで、12歳以下の子供の意思表示が認められるという法案が可決されました」(大槻先生)
現在日本では、回復が見込めず、人体がすでに人生の最終段階を迎えている場合には積極的治療を選択しないなどとする尊厳死については、社会的な合意が徐々に形成されつつあるという見方もある。しかし積極的に死を選択する「安楽死」については、時々メディアで取り上げられるに過ぎない。
生きることは素晴らしい。
死ぬこともまた、
素晴らしくありたい。
大槻先生が紹介した、日本で尊厳死を意思的に選択した長谷川聡子さんの言葉だ。
治療の効果がなく耐え難い心身の苦痛を伴う状態でも、死ぬまでそれに耐えるべきなのか否か。それを大切な人に強いることができるのかどうか。超高齢社会の今、本人が死を選択する権利を法制化すべきかどうかも含め、死について私たちが真剣に考えざるを得ない時がやってきている。
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取材講座:「Death Education 〜死と向き合って生きる」(早稲田大学エクステンションセンター早稲田校)
文/藤村はるな 写真/まなナビ編集室