「ヒトラーは、純粋なアーリア人の遺伝子を残すためには、欠陥のあるものは排除しようという考えを持っていました。結果、知的障害や身体障害、精神障害のある人々も同時に根絶しようという考えを抱いたのです。そこには、てんかんや統合失調症、認知症などの精神疾患や神経疾患を患う人々も含まれていました。医療機関で医師にこれらの疾患を持つ人々を診断させ、基準を満たした人々を収容所に入れ、『安楽死プログラム』と呼ばれる同意書にサインをさせては、ガス室送りにしていたのです」(大槻先生)
1984年、オランダの最高裁で可決
ヒトラーの大量虐殺は、倫理や人間性を一切無視した「安楽死をする人間=生きる価値のない人間」としたものだった。昨今では、回復の見込みのない耐え難い苦痛を持つ心身の病気を患った場合、その苦しみから逃れる術として「死の選択」があり得るのかどうかが議論されている。
では、現代における「安楽死」は、どのような観点から国によっては認められているのだろうか。
「世界で最初に法律的に『安楽死』が認められるようになったのはオランダです。とはいえ、ヒトラーのように、人間の価値を認めないからこその安楽死ではなく、むしろその逆。1984年にオランダでは『耐え難い肉体的苦痛があるときは、医師は治療よりも苦痛を取り除くべし』との意見がでて、最高裁で可決されました。そして、2001年に安楽死法が上院で可決されました」(大槻先生)
なお、安易な自殺などを生まないために、その死の選択が「安楽死であること」を認めるためには5つの条件があるという。