ロボットがもてなす「変なホテル」の狙いは?
地方創生と経済活性化の話題になると、必ず出てくるのが人口減少の話です。人口はこの先減る一方なのだから、縮小経済との付き合い方を探るべきだ、という考え方です。私はこの発想は、悲観的もしくは誇張され過ぎていると感じます。
日本の人口が最も減少するのは2030年代ですが、そのころでも高齢者や女性の就労率の上昇を考えると労働人口の減少は年率で1%くらいです。それによって、経済成長率は今より0.6~0.7%低下しますが、それでも1%以上の成長率は維持できます。マイナス成長を前提にするのは明らかにおかしい。
さらに、人口減少下の人手不足は成長戦略にもなり得ます。18世紀後半に起こった産業革命を例に考えてみましょう。
産業革命がなぜイギリスで起こったのか? これは、経済史上の大きなテーマなのですが、最近では、イギリスの賃金が高かったから、という説に注目が集まっています。
イギリスは肥沃な農地が少ないため、若く健康的な男性は外国に出稼ぎに行ってしまい、慢性的に人手不足でした。そうすると、実質的な賃金が上がります。そこで経営者たちは、なんとか人件費を抑えて効率化を図ろうと、世界で初めて紡績機械を本格導入します。
こうした経緯から日本もヒントを得ることができます。今、IoT(「モノのインターネット」=さまざまな物がインターネットにつながって情報交換する仕組み)やAI(人工知能)、ロボティクス(ロボット工学)など、新しい技術革新が進んでいますが、ビジネスでの効果的な活用方法は見いだせていません。AIが囲碁に強いと言われても、ビジネスにどう役立てていいか、誰もわかっていないんです。
長崎県のハウステンボスにある「変なホテル」をご存知でしょうか。AIを備えたロボットが接客するホテルとして話題を呼んでいます。このホテルの狙いは、人手を極限まで抑えたホテル運営のノウハウを蓄積することです。
少子高齢化は日本だけでなく世界中で避けられません。そうした中で、日本が人口減少に対応するノウハウを持っていれば、それがいい輸出品になるはずです。
まなナビ編集室より:秋に飯田先生の新講座が開講される予定です。
〔講師の今日イチ〕
ひと言でいうと、経済成長は移動から始まります。
文/小島和子 写真/小島和子(講座写真)、(c)oneinchpunch / fotolia、(c)ハウステンボス/J- 18037