心すっきり!「歩きながら瞑想」が新たなトレンド?

ラビリンス・ウォーク~歩きながらの黙想(その1)@上智大学

イライラの絶えない現代社会。心を静めて無心になり、己と向き合う時間が欲しい!──という方におススメなのが、「歩く瞑想(ラビリンス・ウォーク)」だ。マインドフルネスなどをはじめ、ビジネスマンの間でも話題になっているという。上智大学の公開講座「シャルトル・ラビリンスを歩く ラビリンス・ウォーク~歩きながらの黙想」で体験できると聞き、取材した。

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上智大学公開講座で行われたラビリンス・ウォーク

イライラの絶えない現代社会。心を静めて無心になり、己と向き合う時間が欲しい!──という方におススメなのが、「歩く瞑想(ラビリンス・ウォーク)」だ。マインドフルネスなどをはじめ、ビジネスマンの間でも話題になっているという。上智大学の公開講座「シャルトル・ラビリンスを歩く ラビリンス・ウォーク~歩きながらの黙想」で体験できると聞き、取材した。

ラビリンス・ウォークって何?

最近、「歩く瞑想」として注目が高まっているのが、「ラビリンス・ウォーク」だ。耳慣れない名前だが、円の中に描かれた曲がりくねった一本道が描かれた「ラビリンス」を、瞑想しながら歩くことをいう。1990年代にローレン・アートレス(米国聖公会グレイス大聖堂司祭)たちの活動によって、全世界的に広まった。

ラビリンスウォーク・ジャパン運営者の武田光世先生はこう語る。

「世界的に有名なのは、フランスのシャルトル大聖堂の床に中世に描かれた『シャルトル・ラビリンス』です。1991年、このラビリンスのレプリカを、米国サンフランシスコのグレイス大聖堂が堂内に設置し公開したことをきっかけに、広く知られるようになりました」

教会では、円の中を続く1本道の曲がりくねった道を歩くことで、祈りや黙想をするというものだったが、今では内省やグリーフケアやリラクゼーションなどのために、大学キャンパスや病院や公園などで開催され、子どもから高齢者まで幅広い人が参加している。また、近年注目されているマインドフルネスなどの一環としても使われることもある。

日本でもキリスト教系大学などで体験できるように

ラビリンス文様

上の図は、フランス・シャルトル大聖堂で実際に使われているラビリンスの文様だ。円の中を11周することから、「十一周回シャルトル・ラビリンス」と呼ばれる。講座で使われたのは、縮小版の「七周回 シャルトル・ラビリンス」である。

日本ではなかなか体験する場は少ないが、レプリカの敷布を使用して、上智大学をはじめ、国際基督教大学(ICU)などで毎年開催されている。

「ただ座って瞑想するよりも、歩くという動作があるほうが、眠くもならないし、自分の行動に没頭できる。それが、ラビリンス・ウォークの長所のひとつ」

と、講座主催者の一人であるリチャード・ガードナー先生は語る。

初心者でも準備なしでできるシンプルさが特徴

じつは体験する前には、教会から広まったということで、「キリスト教徒でなければ体験できないのでは」とか「キリスト教を知らないと理解できないかも」といった不安があった。

しかし、講座のコーディネーターである山岡三治先生(上智大学神学部・実践宗教学研究科教授)の、
「クリスチャンでなくても参加できますし、『線に沿って歩く』だけなのでシンプルです。事前に簡単な説明を受ければ、誰でもすぐに挑戦できますよ」
というアドバイスに押されて、早速飛び入りでチャレンジ。

線の上を歩く。他人の歩みを邪魔しなければ追い越しOK

参加者は、高校生から中高年の男女まで、幅広い年代の人々が十数名。数分の説明を受けた後、「ではやってみましょうか」とラビリンス・ウォークが始まった。

やり方は、手前にある入口から入って、中心部にしばらく留まり、その後は入ってきた道をまた辿って戻るという3ステップのみ。いたって簡単だ。

ただし体験中は私語厳禁。わからないことがあっても聞くことができないが、 ラビリンスは1本道で、分かれ道等は一切ないから道に迷うことはない。

今回は参加人数が多いため、この円の中を数分ずつ時間をずらし、歩き始めた。歩く速度はその人自身のペースに任されており、少し早めのテンポで歩く場合は、前の人の歩みの邪魔さえしなければ、追い越してもかまわない。

「線の上を歩く」
「他の人の歩みを妨害しない」
この2点にさえ注意すれば、難しいことはひとつもない。とにかく線の上を歩くことのみに集中していたが、慣れないせいかややペースが速いのか数人の人を追い抜いた末、ラビリンス・ウォークは終了した。

驚くほど速く時間が経つ

終わって時計を見てみると、経った時間に驚いた。なんと40分が経過していたのである。その間、誰もが終始無言。そして歩き始めてから1時間後、最後の一人が歩き終えた。

歩き終えた後は、「今日はラビリンス・ウォークからどんな印象を受けたか」という感想を共有し合うという。だが、同じラビリンスを体験したにもかかわらず、その感想はまさに千差万別だ。

狭い空間なのに意外なほど時間がかかったこと、線の上を歩むことや他の人と接触しないことに集中してしまい、無心で歩いてしまったことを伝えると、武田先生はこう語った。

「狭くは見えますが、円をゆっくり7周しているため、けっこう時間がかかります。ゆっくり歩くとだいたい1時間近くかかりますね。

また、ラビリンス・ウォークへの向き合い方は人それぞれです。祈りながら歩いてもいいし、いま抱えている悩みについて考えながら歩いてもいいし、何も考えずただ歩くことに集中してもいい。こうしなければというルールはないので、自分なりに歩けばよいのです」

ラビリンス・ウォークは人生の追体験だ

ほかの参加者は、
「前回はあまり周囲の人に合わせずに歩いたので、今回は前の人の歩く速度に合わせるように心がけました。他の人に合わせてみるのもいいですね」と言う人もいれば、「家族の悩みについて考えながら歩きました」という人も。共通しているのは「いまある自分の立ち位置を見つめ直すことにつながった」という点だ。

「ラビリンス・ウォークは人生と一緒です。誰かとテンポを合わせて一緒に歩くこともあれば、自分一人でマイペースに先を進むこともある。また、真っすぐな道は歩きやすいけれども、曲がるところはやや困難を感じることもあるでしょう。

一人で歩いているつもりでも、すでに誰かが歩いていたり、自分の後ろに同じように道をたどっていることもある。こうした体験が、自分の人生を見つめ直すことにつながるのではないでしょうか」(武田先生)

左から、山岡三治先生(上智大学神学部・実践宗教学研究科教授)、武田光世先生(ラビリンスウォーク・ジャパン運営者)、リチャード・ガードナー先生(上智大学名誉教授)。

◆取材講座:「シャルトル・ラビリンスを歩く ラビリンス・ウォーク~歩きながらの黙想」(上智大学公開学習センター)

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