乳がん11人に1人、子宮がん33人に1人
がんの発症率は意外と高く、女性の2人に1人はがんになる。そのうち乳がんは11人に1人、子宮がん全体では33人に1人、子宮頸がんは75〜80人に1人の割合だ。
子宮体がんは子宮の上部に発症し、ピークは50代〜60代だ。一方子宮頸がんは子宮の入り口にできる。ピークは20代から多くなり、30代、40代だという。体がんに比べて頸がんが注目されるのは、発症の原因が明確になっており、そして発症のピークが働き盛りであったり、女性の妊娠可能期間と大きく重なるためだ。
ひとくちにがんと言っても、その種類はさまざまだ。進行の早いものもあれば、遅いものもある。子宮がんは比較的予後のよいがんと言われており、死亡率も高くないとのことだ。
しかしある程度進行してから発見されると、放射線治療が必要になる。すると子宮の隣にある卵巣にも影響してしまい、一瞬で卵巣の機能がなくなるという。そのため、放射線治療が必要ではない段階で見つけて治療することが重要なのだという。
がん化前の上皮内がんになる人は年に3万人
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症する。順天堂大学医学部の寺尾泰久准教授によると──
「HPV(人パピローマウイルス)は世の中に100種類くらいありますが、そのうち性交渉で感染すると言われているのは、30〜40種類です。そのうち、発がん性のあるものは15種類くらい。特に問題になるのは、16型、18型です。
頸がんはHPVの関与がほぼ100%と言われていますが、その他にも、外陰がん、肛門がん、咽頭がん、口腔がんなどの原因になることがあります」(寺尾准教授)
1年間に子宮頸がんで亡くなる人は3000人ほどという。しかしがん化する前の上皮内がんになる人は30000人ほど。早い段階で発見・治療をすることが死亡率を下げることになる。
がん化前は自覚症状なし。女性はみな検査を
「HPV感染は性交渉が原因のひとつとされていますが、珍しいウィルスではなく、どこにでもいます。性交渉をする年齢になると、80%ほどが感染します。しかし通常は、自然に排泄されて消えていきます。このうち16型や18型が子宮頸部にずっと居残った人に、がんになる可能性があります」(寺尾准教授)
子宮頸部で増殖したHPVは頸部の細胞の形を変えてしまう。これを「異形成」という。
異形成は、軽度、中等度、高度と分類される。それが徐々に浸透していき、上皮内がんになる(現在は異形成の分類が変わり、LSIL〈軽度、中等度異形成が対応〉とHSIL〈高度異形成、上皮内癌〉に分けられる)。
さらに進行すると、基底膜を超えてがんが浸潤していく。ただ感染してすぐにがんになるわけではないという。
「がんになると進行は早まりますが、感染から異形成になるまでは5〜10年かかります。ゆっくりしたものなので、焦ることはありません。また軽度異形成だと、5〜8割くらいが治ってしまいます。中等度でも治ることがあります。しかし高度異形成になると、よくなる率は10%程度に下がってしまい、治療が必要になってきます」
がん化する前、異形成の状態での発見をすれば、体の負担はほとんどかからない。この状態では自覚症状がないため、発見できるのは検診だけだ。女性の身体のみならず、次世代に命をつなぐためにも、検診は不可欠なのだ。
寺尾泰久 てらお・やすひさ
順天堂大学医学部産科婦人科学講座・先任准教授
1996年順天堂大学卒業。米国留学を経て、2007年より同・准教授。婦人科診療・手術の傍ら子宮体がんの個別化医療に向けての基礎研究を行っている。専門は婦人科悪性腫瘍。
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◆取材講座:「恥ずかしがらずに受けよう・勧めよう子宮がん検診」(順天堂大学医学部附属順天堂医院)
取材・文/和久井香菜子 写真/まなナビ編集室