大学で知識という3D眼鏡を手に入れる

【Interview】上智大学公開学習センター長 柴野京子先生

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上智大学公開学習センター長・柴野京子先生

50年前の卒業生が20~30代と

上智大学公開講座のもうひとつの特色は、本学の教員を中心に教養・実務講座を開講していることだ。

「他大学では外部の先生に講演をしてもらう……というスタイルも最近は多いようですが、上智大学ではオムニバス形式で外部講師をお願いする場合も、企画や講座のとりまとめは本学教員が行っています」

受講生の年齢層も10代から80代まで、高校生から社会人、主婦などと幅広い。

「上智大学の公開学習センターは、夜間の講座が多いので、他大に比べると社会人の方が多いかもしれません。リタイアした方だけでなく、仕事帰りの社会人の方でも通いやすい時間帯になっていると思います。

リピーターの方も多いですね。たとえば、50年ほど前に上智大学に通っていらした卒業生の方が、リタイアされたのを境にずっと講座を受講してくださっているケースもあります。シニアの方もみなさん20~30代の若い世代とも上手にコミュニケーションを取っていて、交流や勉強会も頻繁に行われているようです」

20年企業で働いて、42歳で大学院へ進学

生涯学習は、ともするとシニアの趣味・娯楽ととらえられることもある。だが、一度社会に出た大人たちこそ、再度、学校で学ぶ意義があると柴野先生は続ける。

「私は、出版関係の一般企業で約20年間働いていましたが、40歳過ぎたころに『自分のこれまでやってきた仕事を、もう一度学問として勉強してみたい』と思うようになったんです。確かに若い頃に比べると体力も記憶力も衰えはありますが、社会人には働いた年月に積み重ねてきたものがあります。そこに、『自分の仕事が社会的にはどんな意味を持つのか』といったアカデミックな視点を加えることで、若い頃とはまた違った学びが得られると思います。私自身、会社員時代はさまざまな限界も感じていましたが、学問をすることで、自分に力がついたとも感じましたね」

柴野先生は、まずいろいろな大学の公開講座を調べ、自分が学びたいことを精査した結果、42歳のときに大学院へと進学を決意。その後、博士課程まで進み、上智大学文学部新聞学科で出版やメディア文化に関する教鞭をとっている。

大学院時代は、若い学生たちと机を並べ、毎日膨大な量の論文や資料と向き合う日々を送り、「初めのころは毎日が大変な思い」だったという。だが、そのなかでも学ぶことの楽しさは色あせなかったと柴野先生は語る。

「学ぶことは、いくつになってもやはり楽しいんですよ。新しい知識を吸収することで、これまで気が付かなかった自分の可能性を、いくらでも見出すことができるので。いくつになっても、可能性はあるんです。知識とは、まるで3D眼鏡のようなものですよね。これまでは平面でしかとらえていなかった世界が、知識を得ることで急に立体感が出て、3Dに見えてくる。いくつになっても学ぶことは無駄にはならないし、とてもクリエイティブな作業だと思いました。

質問の数とクオリティーが違う

大学生と社会人。属性の違う「学生たち」と常に向き合っている柴野先生は、両者の学びの姿勢に大きな差異を感じるという。

「社会人の方は、学生に比べると、知識を得ることに対して非常にアグレッシブですね。受講態度は目に見えて違います。

特に、質問の数とそのクオリティーですね。社会人向けの講義になると、とたんにみなさんから質問攻めにされます。また、経験や知見をお持ちの方も多いので、講師と討論される方も目立ちます。

社会人講座では、みなさんが『勉強するんだ』『ここでなにかを持ち帰るんだ』という気持ちにあふれているからこそ、教員側は試されていると日々感じます。講師側も本気になるので、より、いい緊張感が生まれているのではないでしょうか」

〔今日の名言〕「知識を得ることで、いくつになっても自分のなかに可能性を見出すことができる」

〔大学のココイチ〕上智大学は、海外では「ソフィア・ユニバーシティ」と呼ばれているが、「ソフィア」とはギリシャ語に由来しており、「人を望ましい人間へと高める最上の叡智」を意味する

2017年4月14日取材

文・写真/藤村はるな

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