外国人に聞かれる前に知るべき日本の盆栽スポット

日本盆栽ー小さな巨木(その2)@京都造形芸術大学・藝術学舎

世界中で愛される “Japanese Bonsai”。今年4月には「第8回世界盆栽大会」がじつに28年ぶりに日本で開催され、世界中から愛好家がつめかけた。そのうち海外で「日本人なのに盆栽知らないの?」と言われる日がやってきそうだ。そこで、盆栽の魅力を学ぶ「日本盆栽 ―小さな巨木」講座(京都造形芸術大学・藝術学舎)、今回は知っておきたい盆栽鑑賞スポットを紹介する。

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盆栽・行の間

五葉松 銘「日暮し」(さいたま市大宮盆栽美術館提供)

世界中で愛される “Japanese Bonsai”。今年4月には「第8回世界盆栽大会」がじつに28年ぶりに日本で開催され、世界中から愛好家がつめかけた。そのうち海外で「日本人なのに盆栽知らないの?」と言われる日がやってきそうだ。そこで、盆栽の魅力を学ぶ「日本盆栽 ―小さな巨木」講座(京都造形芸術大学・藝術学舎)、今回は知っておきたい盆栽鑑賞スポットを紹介する。

世界盆栽大会に各国から45,000人もが

今春、テレビなどで「盆栽」を目にすることが多いなと思っていた。空港に着いた外国人に密着取材する番組でも、その外国人の来日目的は「世界盆栽大会」。2017年4月27日から30日まで、埼玉県さいたま市で「第8回世界盆栽大会」が開催されたのである。

「世界盆栽大会」は1989年に、同地で初めて開かれて以来、4年ごとに世界各国で行われたが、28年ぶりに最初の開催地・日本に戻ってきたのだ。世界各国から延べ45,000人もの愛好家が訪れ、その模様はYouTube Liveで世界配信された。

講師の川崎仁美先生によれば、この「世界盆栽大会」が、ここ最近の世界の盆栽ブームの牽引役となっているという。

日本人の知らない「盆栽」の世界

ところが日本国内では、盆栽がそんな世界的ブームになっていることを知らない人も多い。そこで本記事では、遅ればせながら盆栽ブームを味わいたい方に向けて、講義の中で紹介された、盆栽を見るならココという盆栽スポットを、紹介していきたいと思う。

まず、何と言っても、「世界盆栽大会」が開催された「盆栽の聖地」大宮(埼玉県さいたま市)。ここには、世界で初めて設立された公立の盆栽美術館「さいたま市大宮盆栽美術館」がある。

川崎先生は、盆栽美術館で配布される資料を紹介しながら、なぜ大宮が聖地となったかを解説した。

盆栽庭園

盆栽庭園(さいたま市大宮盆栽美術館提供)

一軒あたり10鉢の盆栽を義務付けて

江戸時代、東京の団子坂(文京区千駄木)あたりに、大名屋敷の手入れをする植木職人たちが多く住んでいた。その中から盆栽を専門とする職人も現れた。江戸、明治、大正と続いてきたのだが、1923年、関東大震災で大ダメージを受けてしまう。そこで、盆栽の育成に適した場所を求めて東京を離れ、探し当てたのが、埼玉県の大宮であった。

集団移住した職人たちは今のさいたま市北区盆栽町のあたりに家を構えた。その地区に建てる家には盆栽を10鉢以上置くこと、などの独特の規則を作り、この地は一大「盆栽村」となった。この盆栽村は、昭和11年(1936)には35軒の盆栽園が軒を連ねたが、現在では6軒がその名残を伝えている。「さいたま市大宮盆栽美術館」はその盆栽村に隣接する形で設立された。

松の盆栽が畑に並ぶ

このほかにも盆栽マニアならぜひ訪れておきたい鑑賞スポットを紹介しよう。

まずは「産地」の有名スポット。松の一大産地である香川県高松市鬼無(きなし)町である。松の盆栽が有名で、ここの松は畑で育てられているという。形を整えられた小さな松が並ぶ盆栽畑。なんともフシギな響きだ。町には「鬼無植木盆栽センター」があり、毎年10月下旬には「きなし盆栽植木まつり」が開催される。

東京の立川市にある国営昭和記念公園にも、盆栽苑がある。ここは、世界的にBONSAIが有名になっていくなか、日本には盆栽の展示施設がほとんどなかったために作られた施設だという。

また、東京の江戸川区には、盆栽大会で名を馳せる盆栽職人・小林國雄さんが運営する「春花園BONSAI美術館」がある。そのHPに載っている小林さんの言葉が熱い。

「盆栽は四季折々の植物の美しい表現を見せてくれるとともに、修羅場に生きる命の尊厳を私に教えてくれます。盆栽を始めて30年が経ち、盆栽に魅せられて美術館まで造ってしまいました。盆栽の表情らしさを世界に広めたいとの願いから、日本のみならず、海外からの弟子育成に励んでおります」

好まれる盆栽、関東では「ストイック」。名古屋では「どっしり」

関西には現在、盆栽の美術館はまだない。しかし、今秋、世界遺産の二条城で盆栽展が開催されるという。その名も、「二条城 DE 盆栽展」。川崎先生はこの展示会の盆栽大使を務めるという。

京都と盆栽とは、やや意外な取り合わせかもしれないが、これについては次回「3鉢で所領を3つゲットした武士も、盆栽の歴史総ざらい」の記事で詳しく紹介しよう。

さて、川崎先生によれば、盆栽にも地域性があるそうだ。たとえば、関東ではストイックでシンプルなものが好まれる。関西では、盆器など飾り付けも重視される。調和がとれ、美術品としての価値が高いものが愛されるそうだ。名古屋は、どっしりとした作りの盆栽が好まれるという。盆栽も、風土に合わせてその姿を少しずつ変えていく。その地域性を知っていく喜びも、あるという。

マニアックに思われがちな盆栽の世界。世界の人々が見抜いたその魅力に、日本人も目を向ける時期が確実に来ていることを感じさせる。

協力(盆栽写真)/さいたま市大宮盆栽美術館

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〔今日の名言〕盆栽には「プロ」と「アマチュア」があり、日本で一番有名なアマチュアの盆栽愛好家は「磯野波平さん」である。・・・なるほど、と会場中が沸いた。
〔大学のココイチ〕 京都造形芸術大学は「瓜生山」という山を利用して、キャンパスが作られている。芸術大学らしく、そこここにモニュメントがあるのも楽しい。

取材講座:「日本盆栽ー小さな巨木」(京都造形芸術大学・藝術学舎瓜 生山キャンパス)
文・写真/植月ひろみ

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