キャンパスライフを十分謳歌してきたように思える内館さんだが、それなりの行きづらさもあったと話す。
「学食のお昼なんて全部18から22までの子が、安い学食をがんがん食べてるわけでしょ。むんむんわんわん雰囲気がすごい。その中にはいるのは、私だって特別楽しいというわけではないですよ。芋煮会も学祭も、我が子のような年齢の学生と楽しむのは無理がある。社会生活でもっと楽しいことを経験してきたわけだから当然ですよね。自分が現役大学生の時のようにはなじめません。
でも、講義は“若い子ばかりで気後れする”という気持ちはゼロでした。それに講義で面白いことに出合えるのですから」
「年を取ることはいまいましい」けれど
年を重ねたゆえのメリットもある、と内館さんは力説する。
「石原慎太郎さんが新作の中で『年を取ることはいまいましい』と書いていらして、ああ本当にうまい表現だと思いました。誰でも年を取れば記憶力も体力も落ちてきますし。でも、この年になったからいいこともあります。
まず、自分が一番行きたかった大学にも簡単に行けますよね。私の友達で憧れていた女子大の講座に通っている人がいるんです。彼女は家の事情で高校だけで社会に出ました。だから、彼女は今キャンパスを歩くだけでうれしいって言っています。
大人が学び直しで大学を選ぶときには、その後の就職先とか結婚の条件とか関係ありませんよね。だから、純粋に学ぶ楽しさを感じられる気がします。何かを始めたいと思ったら、その時が一番若い、と私はドラマのセリフで書いたことがあります。だからこそ始めてみてはどうですか、とみなさんにお伝えしたいと思うんです」
〔前編を読む〕「日常から離れた講座を」
2017年3月13日取材
文/まなナビ編集室 写真/chihiro.