修道院ビールのうまさからホップの意外な効用まで

【Interview】45才カメラマンが通い始めた公開講座(前編)

昨年10月、受講生として20数年ぶりに母校、上智大学の教室に足を踏み入れたフリーカメラマンの渡邉茂樹さん(45)。学んだ講座は、「ビールの世界〜その奥深さと味わいのツボ〜」。同窓会仲間に誘われたのがきっかけで受講を始め、週1回、3か月間、ほぼ休まず通った。

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フリーカメラマンの渡邉茂樹さん

フリーカメラマンの渡邉茂樹さん

昨年10月、受講生として20数年ぶりに母校、上智大学の教室に足を踏み入れたフリーカメラマンの渡邉茂樹さん(45)。学んだ講座は、「ビールの世界〜その奥深さと味わいのツボ〜」。同窓会仲間に誘われたのがきっかけで受講を始め、週1回、3か月間、ほぼ休まず通った。

先生は元キリンビール研究員の“ビールオタク”

「講師の米澤俊彦先生は、元キリンビールの研究員で、かなりの〝ビールオタク〟。僕は仕事が忙しくて講義の開始時間に遅れた日も何度かあったんですよ。でも、毎回最後にテイスティングがあったので、それには間に合うように行っていました(笑)。いつも先生がオススメのビールを3〜4種類持ち込んで飲ませてくれたのですが、どれもおいしくて…」

そう笑うのは、人物、静物、旅、文化…と幅広いジャンルで活躍するフリーカメラマン、上智大学法学部卒の渡邉茂樹さん。

受講生はおよそ25名。もちろん上智大学の卒業生以外もたくさんいる。

「上智卒だから、とかたまって何かする校風ではありません。附属のない大学ですから、慶応や早稲田、青学などと比べて、卒業後のつながりは強くないですね。それぞれ好きなことをやっている人が多いというか…」(渡邉さん、以下「」内同)

トラピスト修道院のビールに感動

期間中3回、オフィシャルとして、講義が終わった後にみんなで食事へ。場所は、ビール専門店や中華レストラン。クラフトビール(地ビール)が飲める店だ。

「家では発泡酒ばかり飲んでいたので、この講座で初めてクラフトビールのおいしさを知りました。感動したのが、世界で11か所のトラピスト会修道院で作られるトラピストビール。製法は明らかにされていないけれど、飲んでみると、麦汁や麦芽のコクや旨みが強い。僕はホップをたくさん入れて香りをつけているものよりこちらが好きです。トラピストビールは営利目的で作っているのではなく、自分たちが飲むためにも作っているから、うまいのかもしれませんね(笑)」

この講座を受講して一番良かったのは、先生の面白い話を聞けたこと。

「例えば、ビールの製法過程で、麦汁を温めて糖化する方法。それには2つあって、ひとつはゆっくり全体を温めるInfusion法。もうひとつは、麦汁の一部を取り出して超高温で加熱し、温まったものを戻すDecoction法なのだそうです。このDecoction法の超高温加熱というのは、歴史的には焼き石を麦汁に放り込んで加熱していたことが起源だとか。なんとも原始的ですよね」

ホップには胸を大きくする成分が

米澤先生のマニアックなネタは止まらなかったという。

「チェコでは、ホップ摘みのバイトをするのは若い女性という伝統があるそうです。それって実は、ホップの中に胸を大きくする成分が入っているからなんだそうですよ(笑)。そんな風に次々と面白い話が飛び出して、もっといろいろ知りたくなりました。図書館で『ビールの歴史』の本を借りて読むと、講座で習ったことの理解がさらに深まって、それがまた楽しかった。こんな機会でもないと、なかなか図書館の本で勉強することはないですよね。講座を聞いて、ビールを飲んで、再度自分で学ぶ−−そんな良いスパイラルができたことで、前向きな気持ちになりました」

そしてビールの講座を終えたあと、渡邉さんは、すぐに次に学ぶ講座を探し始めた。

(続く。次の記事「自分を再教育する場を見つけて脳から快感物質が」)

※注 現在、上智大学の講座ではテイスティングを行なっていません。

文/まなナビ編集室 写真/渡邉茂樹

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