グローバリゼーションを推し進めるもの─技術・経済・フィクション
「“グローバリゼーション”という言葉が経済や歴史の用語として使われるようになったのはそれほど昔のことではないんです。アメリカの歴史学者ケネス・ポメランツが『大分岐-中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成』を著した2000年代以降、この言葉が使われるようになったのです」
そう語るのは、学習院大学名誉教授の湯沢威(たけし)先生。「グローバリズムと現代」と名づけられた学習院さくらアカデミーの特別講座の中での話である。
湯沢先生によれば、グローバリゼーションは「技術」「経済」「フィクション」などの要因によって突き動かされるのだという。「フィクション」とは何かというと、偶像や宗教、国家、経済信用、規範や制度などをいう。
大航海時代へさかのぼると
私たちがいまイメージするグローバル企業といえば、Googleやアップルなど、IT技術に支えられた企業だ。ITの発展と普及にともなって、私たちは瞬時にして地球の反対側の情報やサービスに接することができるようになり、世の中は驚くほど便利になった。そのスピードの速さは私たちの予想をはるかに超え、怖さを感じるほどだ。
グローバリゼーションは、これまで次のようなことを引き起こしてきた。
〇多様な民族との交流や多様な文化の享受。
〇原材料を世界から調達し、多様な製品が世界へ販売。
〇市場の拡大や自由な競争。それによる経済の活性化。
〇経済規模の拡大追求。具体的には大量生産、大量消費。
〇世界的な分業の推進により、多国籍企業の活躍。
考えておきたいのは、経済圏が世界的に拡大するこのような事例は、「グローバリズム」という言葉が誕生するはるか以前から、幾度もあったということだ。
「前グローバリゼーションともいうべき第1のグローバリゼーションは15~17世紀にありました。ポルトガル、スペイン、イギリスといったヨーロッパの国々が海洋進出し、世界中からじゃがいも、トマト、コーヒー、たばこ等を持ち帰り、それらはやがて人々の生活に浸透したのです。これはコロンブス交換と呼ばれるもので、明らかなグローバリゼーションと言っていいでしょう」(湯沢先生。以下「」同)