五輪の仰天写真事情と米NBCが払う4950億円の意味

オリ・パラ、ラグビー、マスターズ支援基礎教養講座(その1)@上智大学公開講座

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トランプ大統領に反論

しかしメディアはカネと権力の言うなりにばかりなっているわけではない、と竹内先生はひとりの記者の話を始めた。

「ドイツの公共放送ARDの記者、ハヨ・ゼッペルトという人物です。この記者が2014年に素晴らしい仕事をしました。かねてからロシア陸上界のドーピングの噂は絶えなかったのですが、決定的な証拠がなかったんですね。そこで、ゼッペルト記者はソチ五輪の前にその実態を何とかリポートできないかと、2013年秋ごろから一生懸命取材をしていたのです。すると、ロシアのドーピングに関わっている人物の方から、『国内で訴えても揉み消されるだけ。むしろ身が危ない』と託されることとなったのです。

この内部告発をしたのは、ロシアの陸上女子・長距離選手のステパノワと、その夫でした。夫はロシア反ドーピング機関の検査官で、彼女と結婚するまで自分はドーピングをする選手を取り締まることができていると思っていたそうです。

でも結婚した後、奥さんから『うちの陸上チームはほとんど全員やってるのよ』という耳を疑うような話を聞かされる。それがきっかけとなってシカゴマラソンで3連覇した選手も、ロンドン五輪800mで優勝した選手も、みんなドーピングをやっていたことがわかっていきました。

これをARDは1時間のドキュメンタリー番組にしました。これを機に、世界反ドーピング機関(WADA)が調査を開始、ロシアの国家ぐるみの隠ぺい工作が明らかになり、ロシア勢はリオ五輪の出場が厳しく制限されることになりました」

使われた薬物は、いわゆる筋肉増強剤ではなく、自分の成長ホルモンを過剰に分泌させるもの。体内でも分泌されるので、ドーピングかどうかを見極めるのが難しかったが、最新テクノロジーでそれを突き止められるようになったことも、告発を後押しした。

「国が揉み消そうとした事実を、たったひとりのドイツ人記者がメスを入れた。メディアによるスポーツの民主化は、オリンピック精神そのものなんです。だからこそ“メディアはいらない、SNSをすれば済む”という、トランプ新大統領に、ゼッペルト記者の功績を挙げて反論したいですね(笑)」

(続く)

〔先生のココイチ〕 今回の講師の竹内浩先生は、リオオリンピックでレスリングの吉田沙保里選手が金メダルをのがしたあとの会見もアテンドしていたまさにオリンピックのまっただ中にいる人物。

〔大学のココイチ〕 上智大学はオリンピック・パラリンピックとの関係が深く、2016年10月には国際パラリンピック委員会フィリップ・クレー ブン会長による講演会も開催された。
上智大学ではこの講演に先立つ2016年10月19日、国際パラリンピック委員会フィリップ・クレーブン会長による講演会も開催された。

 

〔おすすめ講座〕国際メガ・スポーツイベント支援基礎教養講座

取材講座データ
オリ・パラ、ラグビー、マスターズ支援基礎教養講座 上智大学公開講座 2016年11月7日~2017年1月30日

2017年1月23日取材

文/まなナビ編集室 写真/上智大学、Adobe Stock

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