1秒にシャッター15回。1分半後には……
「無人カメラにお気づきでしょうか。これは、1秒間に15回シャッターを切れるロボティクスカメラ。事前にピントを調整しておいてリモコンでシャッターを押すのですが、高速でもすべてピントが合ったきれいな写真が撮れるんです。
配信のスピードも格段に上がっています。昔はカメラマンが撮影したらラボに持って行き、そこから配信という手順がありましたが、今はシャッターを押すとダイレクトにラボに飛びます。誰がどの競技でという情報を入れて、わずか1分半で世界に配信できるのです。スキー競技のダウンヒル(滑降)がだいたい1分半かかるのですが、スタート時の写真がゴール時には配信済みというような時代です」
これには、出席した受講生からも感嘆の声があがった。竹内先生は続ける。
「では記者はどこにいるかというと、競技場からロッカールームに帰るまでの動線に設けられたミックスゾーンという場所です。1984年までは、選手たちは競技後、ロッカールームに入ってから会見場で会見をしていたのですが、競技直後の生々しい声を拾いたいと、ミックスゾーンが1984年に設置されました。トラックで3冠を達成したウサイン・ボルトの時は一言でも彼の肉声がほしい、と世界中の放送権者が集まり、全部回るまでに1時間かかっていました」
IOCが断れないNBCのリクエスト
IOCの収入(2009年~2012年の4年間)は約6400億円。そのうち74%(約4700億円)と圧倒的に大きな部分を占めるのが放送権収入だ。
「リオ五輪では競泳の予選は現地時間の13時~15時20分ですが、決勝や表彰式は22時~24時という、非常に遅い時間に行われました。実はこれ、アメリカのゴールデンタイムともいうべき21時から23時にあたります」
それはなぜか。
「アメリカのテレビ局NBCがIOCに巨額を投じていることが大きいのです。NBCは2014年ソチ冬季五輪から、2020年東京夏季五輪の4大会分の放送権約4950億円にとどまらず、2022年から2032年までの6大会分の放送権約8760億円も契約済みです。アメリカがこの時間にしてくれといえば、IOCも断れない。長野五輪の開会式が朝行われたのも、そういう背景がありました」