串刺し公ヴラドはこうしてドラキュラになった!

アジア史悪人列伝@明治大学リバティアカデミー

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ブラン城

ドラキュラ城のモデルとされるルーマニアのブラン城

映画からも伝わる串刺し公のおどろおどろしさ

ルーマニアで語り継がれてきた伝説のひとつに、夜に乙女が眠っている部屋に入り込み、夢の中で悪行を働く悪魔の話がある。その悪魔の話とヴラド公の串刺しのエピソードを合体させて、19世紀にアイルランドの作家ブラム・ストーカーが生み出した小説が『吸血鬼ドラキュラ』だ。以来、オスマン帝国をおびやかしたヴラド公は、何百年たった今でも記憶に残る存在となった。

「19世紀末は、西ヨーロッパで怪奇ものが流行した時代でした。人間の生き血を吸う怪物が、東ヨーロッパからイギリスにやってくるというストーカーの小説は、その時代の流行にのって大衆に受け入れられたのです」

20世紀になるとドラキュラをモチーフにした映画が何本も作られ、いまなお「人気」の怪物として、小説や映画に登場している。

江川先生はここまで話を終えると、1958年公開の映画『吸血鬼ドラキュラ』のドラキュラの登場シーンを10分ほど上映。クラッシックな映像からは、オスマン帝国の兵士たちが串刺し公ヴラドに対して感じた恐怖はいかばかりだったかと思わせる、おどろおどろしさが伝わってきた。

最後の30分間は受講者から質問が活発に飛び、講座は終了した。受講者は13人。平日の夕方ということもあり60歳以上が8割方を占めていた。コアなテーマだからだろう、歴史に興味がある人たちが集まっていた。

『アジア史悪人列伝』の最終回だったため、講座の後はこれまで登壇された先生方も集まって、教室がある明治大学アカデミーコモンの1階のカフェで受講者とのお茶会が開かれた。6回かけて学んだ知識をさらに深める会になったことだろう。

〔講師の今日イチ〕「本一冊だけ読んでレポートを書いてもダメ!」 江川先生は講座の中で何度も、「どちらの側から見るかで、悪と善かが決まる」と繰り返した。歴史はその時代により、また立場により見方が変わる。「たくさんの本を読めば読むほど、多様な見方を学ぶことができます。そこから自分はどう考えるのかが大切です」

〔おすすめ講座〕「学びなおすオスマン帝国の歴史」

取材講座データ
アジア史悪人列伝 明大アジア史講座No.24 明治大学リバティアカデミー 2016年秋期

2016年11月29日取材

文/まなナビ編集室 写真/Adobe Stock

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