上智大学にて10月開催「宗教改革500周年記念講座」が見逃せない【PR】

『ルターとイグナチオ』同世代を生きた二人の改革者@上智大学

今年は1517年のマルティン・ルターの宗教改革から500年。宗教改革(Protestant Reformation)とは、当時のローマ・カトリックをドイツの聖職者ルターが批判し、カトリックから分離してプロテスタントが誕生したキリスト教史上の大事件である。それから500年を経た今年10月、カトリックのキリスト教ヒューマニズムを建学の理念とする上智大学で、「『ルターとイグナチオ』同世代を生きた二人の改革者」と題する見逃せない講座が開催される。

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「『ルターとイグナチオ』同世代を生きた二人の改革者」講座について語る川村先生

今年は1517年のマルティン・ルターの宗教改革から500年。宗教改革(Protestant Reformation)とは、当時のローマ・カトリックをドイツの聖職者ルターが批判し、カトリックから分離してプロテスタントが誕生したキリスト教史上の大事件である。それから500年を経た今年10月、カトリックのキリスト教ヒューマニズムを建学の理念とする上智大学で、「『ルターとイグナチオ』同世代を生きた二人の改革者」と題する見逃せない講座が開催される。

宗教改革500年の記念講座をカトリック大学で行う意義、

上智大学は1913年、カトリック教会の男子修道会であるイエズス会によって設立された日本で最初のカトリック大学である。「キリスト教ヒューマニズム」に基づく人間教育を使命とし、カトリックの伝統とイエズス会教育の特徴を受け継ぐ教育を行っている。イエズス会の創設者の中心人物は、修道士であったイグナチオ・デ・ロヨラ、フランシスコ・ザビエルらであった。いま、上智大学に隣接する聖イグナチオ教会(カトリック麹町教会)はそのイグナチオ・デ・ロヨラの名を冠した教会だ。

その上智大学の公開学習講座で、宗教改革500周年となる今年、「『ルターとイグナチオ』同世代を生きた二人の改革者」と題した記念講座が開催される。500年前、カトリックと袂を分かったルターと、彼の行った宗教改革を取り上げる、大変注目度の高い講座だ。そこで、同講座のコーディネーターを務める上智大学文学部史学科教授(イエズス会司祭)の川村信三先生に、企画の意図について聞いた。

ルターと宗教改革を学ぶことでカトリックが見えてくる

川村先生は語る。

「上智大学を創立したのは、カトリックの男子修道会であるイエズス会の神父たちです。そのイエズス会の創設者であるイグナチオ・デ・ロヨラ(1491ー1556年)と、宗教改革を起こしたマルティン・ルター(1483-1546年)は同時代を生きた聖職者でした。

ルターは、当時の教皇レオ10世によって出された贖宥状(しょくゆうじょう=購入すると罪の償いの業が免除される)をはじめ、教皇の支配する教会の在り方に疑問を感じたことから、カトリックと決別しました。これがプロテスタントの始まりです。それから500年。カトリックとプロテスタントとの間には根深い対立がありました。

しかし近年、カトリックとプロテスタントの歩み寄りが行われています。また、当時の社会背景などを理解していくと、ルターとイグナチオは、思想や目指すところに似通った部分も数多くあるのです。今年は宗教改革500周年ということで、ルター派(ルーテル教会)を中心に世界中でさまざまな取り組みが行われています。そこで今回、ルターとイグナチオ、同時代に生きた2人の聖職者の活動を見つめ直し、カトリック側から宗教改革に光を当てることで、改めてカトリックとは何かということが見えてくるのではないかと思います」

講座「『ルターとイグナチオ』同世代を生きた二人の改革者」では、上智大学神学部神学科教授の川中仁先生と、日本ルーテル神学校専任講師の宮本新先生がそれぞれ講演を行い、その後、川村先生も加わってパネル・ディスカッションが予定されている。

教会の在り方を疑問視したのはルターだけではない

イエズス会といえば、16世紀に日本を訪れた宣教師であるフランシスコ・ザビエルの所属していた修道会として記憶している人も多いだろう。イエズス会の設立は1534年。そう聞くと、ルターの宗教改革に対抗して(これを「反宗教改革」という)イエズス会が設立され、世界的な布教を目指すようになったのかと考えられがちだが、「実はそうではないのです」と川村先生は続ける。

「かつては、ルターの宗教改革のカウンター(対抗)勢力としてイエズス会が生まれたと言われてきましたが、実は贖宥状の発行や十字軍遠征などについては、ルターが宗教改革ののろしを上げる前から、カトリック神父たちも疑問を抱いていました。実際、教会を変えようとする動きは宗教改革の100年ほど前から起こっています。イグナチオもその一人でした。

そうした大きな流れのなかで、教会自体の改革、つまり『器の改革』が必要だと考え、聖書にのみ真実があるとし、行動したのがルターです。一方で、教会という器を大切にしつつ、『教会は変えられなくとも、一人ひとりの生き方を変えることが大切だ』と考えたのがイグナチオでした」

白く見えるものも、教会が黒だと言えば黒だと信じる

そこで疑問に上がるのが、当時の教会の在り方に必ずしも全面的に賛同していたわけではないイグナチオが、なぜカトリック教徒であり続けたのかという点だ。

「イグナチオがルターと大きく違うのは、ルターは教会の在り方に疑問を持ち、教会を排除して、個人と神との間での信仰によって赦しが得られると考えたのに対して、イグナチオは『自分は何があっても教会や教皇に従う』という意志を貫き通したところです。イグナチオは『白に見えるものも、教会が黒だと言えば、われわれは黒だと信じよう』との言葉を残していますが、仮に教会が一見悪い行いをしていたとしても、それは教会自体が悪いわけではなく、運営している人間たちに問題がある。教会自体が持つ伝統や知識は必要なものであると考えました。また、同時に彼は『イエス・キリストの救いの目に見えるしるし』は『教会』にしか存在しないと信じていたとも言えます。

だからこそ、イグナチオは、当時のキリスト教の抱えていた問題を『教会の問題』と捉えるのではなく、人間一人ひとりの問題に立ち返り、自分の個人的回心(メタノイア)が大切であるという信念を持っていました。つまり、世界を変えようとするのではなく、まず自分が変わること。そうすればおのずと結果があらわれると考えたのです」

回心(かいしん)を目的とし、己の生き方を改めることに重きを置いたイグナチオは、俗世から離れ、洞窟にこもり一人で瞑想を行うなどといった清貧の思想を貫いていく。そうしたイグナチオの思想に共鳴し、弟子はどんどん増えていき、イエズス会は大きな勢力へ成長した。

「イエズス会が生まれたのは、100年ほど前からずっと脈々と受け継がれてきたカトリック教徒たちの間で行われてきた改革が結実した結果です。ルターに対抗する勢力ではなく、イグナチオ自身は、ごくごくシンプルに『自分を変えよう』としか考えていなかったと思います」

カトリックとプロテスタント、2つの視点から宗教改革を複眼的に見ることで

宗教改革で教会の体制を批判し、聖書に救いを求めたルターと、かたや教会の在り方に疑問を抱きながらも既存のシステムを否定せず、中にいる人間の生き方を変えることが大切だと考えたイグナチオ。こうした彼らの生き方を追い求めると、『なぜ教会は必要なのか』といった、カトリックの本質的な部分にたどり着くのだという。

「本講座では、上智大学神学部神学科教授である川中仁先生と日本ルーテル神学校専任講師の宮本新先生のお二人にお越しいただき、対談をしていただく予定です。川中先生はカトリックの立場から。そして、宮本先生にはプロテスタントの立場から。こうした2つの視点から、カトリックとプロテスタントの共通点や相違をしっかり浮き彫りにし、キリスト教の歴史について見つめ直していきたいと思います」

【宗教改革500周年記念講座】
「『ルターとイグナチオ』同世代を生きた二人の改革者」

日時:2017年10月21日(土)13:00-16:30 (60分×3回。途中休憩あり)
場所:上智大学公開学習センター
  〒102-8554 東京都千代田区紀尾井町7-1 上智大学1号館1階
TEL:03-3238-3552 FAX:03-3238-4310
JR中央線・総武線「四ッ谷駅(麹町口)」徒歩5分、東京メトロ丸の内線・南北線「四ッ谷駅(3番出口)」徒歩5分
地図はコチラをご覧ください。
定員:200名
受講料:5,400円(税込み)インターネットでのお申し込みはこちらまで。

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