リハビリのプロがズバリ指摘「家事が老化防止によい理由」

高齢者の体力づくり(その4)@昭和大学

前回の記事「『老化防止ならウォーキングより家事』とリハビリのプロ」で、1日30分のウォーキングより、主婦なら誰でもやっている日頃の家事の方が活動量が多いことを紹介した。引き続き、昭和大学公藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーションセンターの認定作業療法士、渡部喬之先生が家事を勧める理由を解説する。

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前回の記事「『老化防止ならウォーキングより家事』とリハビリのプロ」で、1日30分のウォーキングより、主婦なら誰でもやっている日頃の家事の方が活動量が多いことを紹介した。引き続き、昭和大学公藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーションセンターの認定作業療法士、渡部喬之先生が家事を勧める理由を解説する。

あなどれない風呂掃除の足腰強化効果

運動強度を表す単位に「メッツ」がある。メッツとは、安静時を1とした時と比較して、何倍のエネルギーを消費するかを示すもので、60分を1区切りとする。

前の記事「『老化防止ならウォーキングより家事』とリハビリのプロ」では、ウォーキングと同じか、それ以上に活動量の多い家事があることを紹介した。そのひとつが、風呂掃除だ。

風呂掃除はラジオ体操と同じくらいの3.5メッツの活動量

風呂掃除を60分すると3.5メッツとなる。これは3メッツとなるウォーキング60分を上回り、ラジオ体操に相当する活動量だ。

風呂掃除が活動量が多くなる理由は、その姿勢にある。

風呂掃除は、しゃがむ動作や膝の曲げ伸ばしを行うので、足腰の筋力向上に効果が高いのだ。太ももの筋肉は人間の体の中でも最も太い。その分、動かせば消費するエネルギーも大きく、ダイエットにも効果的だ。

デュアルタスクで脳を活性化する料理

料理は60分で2メッツ。朝昼晩と料理すれば、60分くらい軽く達してしまうだろう。

とくによいのは、手を使うこと。渡部先生は作業療法士としての経験から、手を使うと脳が活性化すると語る。実際、手を使うとどれくらい脳が働くかの分量を数値化したところ、手を使うと足を使った時の何倍もの量の酸素が脳に送られるという。

料理にはもうひとつよいことがある。それは2つ以上のことを同時に行うデュアルタスク(二重課題)であることだ。

煮物を煮ながら、味噌汁の具を切る。主菜の肉を焼きながら、副菜のサラダの盛り付けをする。その間も頭の中では「あと15分で家族が帰ってくるけど、ご飯はあと何分で炊き上がるかしら」とか「久しぶりのトンカツだけどお皿はどれにしよう」などと、思いをめぐらす。

こうしたデュアルタスクが認知症予防につながることは広く知られている。

肩を上げる数少ない活動となる洗濯物干し

洗濯は60分で2メッツ。

洗濯では特に、肩を頭の上に上げる動作となることが注目される。肩は加齢によって動かなくなることが多い。実際、洗濯物干しがしんどいという高齢者は多い。

そうならないように肩の可動域を維持するためにも、洗濯物干しはとてもよい運動となる。ただし猫背で干すと、かえって筋肉を傷めてしまうのでダメ。しっかりとお日様に向かって背を伸ばして干そう。

気軽に活動量が増える階段

買い物も3メッツとかなりの活動量となる。買い物に出た時には、ぜひ駅やスーパーでエスカレーターを使わずに、階段を使って上がってみよう。

階段を上がる動作は4メッツ。階段を上がる効果は活動量を増やすだけではない。階段をスムーズに上がるためには、つま先をしっかり上に上げなければならない。この動作が、加齢によって最初に衰えてくる足関節背屈筋を鍛えるのにちょうどよい。つま先をしっかり上げることでつまづくリスクが減少し、転倒を予防することにつながる。
(参考記事:つまづく、転ぶ。それは、ある筋肉が衰えてきたから

どれくらい階段を上がればよいかは、その人の年齢や体力、心肺機能にもよるが、リハビリで効果があらわれるのは12~14段、つまり1フロアの階段を上ったくらいだという。はあはあするようなら多すぎで、軽く息が上がるくらいが適切だと渡部喬之先生は言う。  

次回「高齢者の転倒を防ぐためのちょっとしたストレッチ3つ」では転倒を防ぐためのちょっとした体操3つを紹介する。

昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーションセンターの渡部喬之作業療法士

◆取材講座:「生活の中での体力づくりとは?─活動を大切に─」(昭和大学公開講座/昭和大学藤が丘病院)

取材・文/土肥元子(まなナビ編集室) イラスト/(c)toyo/Fotolia

-健康・スポーツ, 講座レポート
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