これには受講者から「投資のリスクが高いほど、オプション価値が上がるのは感覚的に分かりにくい」という質問が出た。
これに対し甲斐先生は、「そのリスクを判断してくれるのが、オプション価値です。現時点はWAITを選択しながら、状況が変化してオプション価値が最大になるときがGO(投資のタイミング)であり、STOP価値が最大になる場合は投資をしない。それが数値化されることで、正しい経営判断ができるようになります」と語る。
オプションはゆっくり小刻みに使え
甲斐先生によれば、リスク・マネジメントとはリスクを減らすことではなく、リスクをとるかとらないかを判断することであり、キャッシュ・フロー価値だけではリスクを減らす判断しか出てこない。オプションの最大のメリットはこの柔軟性であり、先が見えない時代であればあるほど、オプションを持っていることが「企業価値」につながるという。
「経営とはこうしたオプションの連続で成り立っています。従来、経営は目に見えないと言われてきましたが、オプションの価値を数値化できるようになり、最適な戦略を見つけることができるようになったのです」
最後に、オプションを使うときのルール3つが挙げられた。
1)先が見えないときほどオプションに価値が生まれる。キャッシュ・フロー価値がマイナスであってもオプション価値があれば企業価値が上がる。
2)オプションはゆっくり使うこと。WAITの価値は高い。
3)オプションは小刻みに使うこと。一気にやろうとしないで、1次、2次、3次といったように状況の変化に対応しながら使うこと。
なお、融資・投資や新規事業・設備投資だけでなく、マーケテイングの際にもオプション価値を取り入れることで、マーケティングをすべきかどうかの判断が容易になるという。
取材講座データ | ||
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「リアルオプション入門から応用まで」 | ファイナンス連続セミナー2017 | 2017年2月28日~3月13日 |
2017年3月13日取材
文/福山嵩朗 写真/Adobe Stock
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