「投資金額に対して将来どれくらいの金額が得られるか」を予想する限界
「オプション価値」とは何か。オプションの言葉としての意味は、選択肢、チャンス、可能性、権利権益など。では「オプション価値」は何を指すかというと、現金や株などの金融資産ではなく、研究開発や新商品開発、マーケティングなどの “可能性” や、それに対して企業が柔軟に意思決定を行える “選択権” をいう。
これを企業の中で考えると、事業価値を判断するときの基準ともなる。設備投資をするべきかどうか、新規事業を始めるかどうか、これらを判断するときにも「オプション価値」の考え方を知っていると役立つのである。
これまで「企業価値」を評価する方法のひとつに、ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)があった。これは投資を合理的に判断するために、投資金額に対して将来どれくらいの金額が得られるのか、つまり「キャッシュ・フロー価値」を数学的に予想するものである。しかしこの不確実性の高い時代に、DCF法は限界があるといわれる。
甲斐先生は、1973年にオプション・プライシング・モデルという算出法が考え出されたことにより、応用数学者のベルマンが1957年に提唱した最適性の原理と併せて「オプション価値」を数値化できるようになったという。近年、日本企業でも徐々に「オプション価値」で「企業価値」や「事業価値」をとらえる兆候が高まってきているそうだ。