柱が見える京都の町家は火事に弱い
富田林の歴史的町家は6軒・10棟が登録されていて、いずれも江戸時代のものである。青柳先生によれば、ここには様々な防災の工夫が見られるという。
木造家屋の最大の弱点は、燃えやすいこと。富田林の町家は、軒裏や柱が塗り込められている。これは城郭建築などによく見られるもので、防火対策として有効である。いっぽう京都の町家などでは表に柱の木材が見えていることが多く、火事に弱いとされている。
さらに、いったん火災になった場合の延焼防止のために、卯達(うだつ)や袖壁が設けられた。カマヤ(炊事場)にも「煙返し梁」と垂れ壁が設置されるなど、防火の工夫があちこちに見られるという。
また、台地状の都市は防衛には優れている反面、用水が確保しにくいという弱点もある。そのため街の中には、「背割水路」や「用心堀」が張り巡らされた。それは生活用でもあり、防火用としての目的も大きかった。
石川県金沢市の金沢城があるあたりもかつての寺内町であり、やはり都市の中には川から水が引かれ堀や水路が張り巡らされていた。
寺内町を例にとり、都市の建築と形成史が述べられたのだが、そこには防災に対する人々の意識がはっきりと見られるようだ。確かに、木造の建物にとって火事は怖い。地震や洪水などの災害も怖い。
都市の形成に災害への備えがあることは考えてみれば当然なのだ。けれど、これまでは「災害史」、災害が起きた歴史だけが語られてきていたのではないだろうか。そうではなく、災害から人々がどう自己防衛してきたのか、に青柳先生は注目している。
〔今日の名言〕 町中 くわへきせる ひなわ火 無用。江戸時代、富田林の防火の標語。
〔大学のココイチ〕立命館大学衣笠キャンパスでは、野良猫(大学猫?)にエサやりをする専門のサークルがあるらしく、公園でひなたぼっこをする猫が可愛かった。
〔おすすめ講座〕立命館大学土曜講座
取材講座データ | ||
---|---|---|
「歴史文化都市の防災と建築史学」 | 立命館大学土曜講座 第3194回 | 2017年2月25日 |
2017年2月25日取材
文/植月ひろみ 写真/青柳憲昌