フランス34.3% VS 日本12.5% 日本男性に足りないものは

日本の少子化が止まらない。厚生労働省によれば2016年に生まれた子どもの数(出生数)は97万6979人と初めて100万人を割り込んだ。死亡数130万7765人から差し引くと、人口が33万786人減った計算となる。1人の女性が生涯に産む子どもの数も前年を下回り1.44となった。いったいどうすれば子供の数が増えるのか。そのヒントは出生率を上昇させたフランスとの対比にあるかもしれない。

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日本の少子化が止まらない。厚生労働省によれば2016年に生まれた子どもの数(出生数)は97万6979人と初めて100万人を割り込んだ。死亡数130万7765人から差し引くと、人口が33万786人減った計算となる。1人の女性が生涯に産む子どもの数も前年を下回り1.44となった。いったいどうすれば子供の数が増えるのか。そのヒントは出生率を上昇させたフランスとの対比にあるかもしれない。

出生数と死亡数のグラフが怖い

「少子高齢化」に対する対策が日本の喫緊の課題であることは確かだが、私たちはいささかこの問題に疲れてきている。

東京都の小池都知事は待機児童解消を政治課題の一つに掲げ、保育所を整備することで定員枠を過去最大の16,003人増大したが、利用申し込みも急増し、昨年度の待機児童数は前年より773人減少したものの8,586人の待機児童を抱えることとなった。

ユーキャン主催の新語・流行語大賞で「保育園落ちた日本死ね」がトップ10に選ばれたのは2016年のこと。それから1年以上経ち、行政がこれだけ努力しても、まだまだ問題は解決には程遠い。

合わせて、高齢者が急増しているので当然ながら死亡率は上がる。2016年に日本の全人口が33万786人減ったのは、この相乗効果(出生数減少と死亡数増加)によるものだ。

日本以外でもこの課題は大きな問題となっており、それを示すのが「平成29年 我が国の人口動態」(厚生労働省)のグラフだ。

ともに「平成29年わが国の人口動態」より

人口が減ると何が起こる?

日本経済大学教授の安井裕司先生は、早稲田大学エクステンションセンター八丁堀校の「国際時事問題入門」で「人口が減少に転じる出生率は2.08。それ以下だと人口が減る」という。

「人口が減り続けると国内市場が縮小し、企業が海外に流出するため国内の仕事も減ってきます。少子高齢化で人口の少ない若者に税の負担が重くのしかかり、世代間の格差は広がる一方になります。仕事がなく税の負担が重いので、子供を持つ余裕もないという、夢のない悪循環に陥ってしまいます」(安田先生)

出生率を上げることが根本解決になるのは確かなのだが、それが上がらない陰には、「少子化問題=女性の課題」という社会的偏見が存在すると、安井先生は指摘する。

出生率2.01を実現したフランスの政策とは

「真剣に少子化対策を考えるならば、フランスのように出生率2.0超えを目指さなくてはなりません。フランスは1994年には出生率が1.68でしたが、国をあげて対策をとり、2006年には2.01を達成しました」と安井先生。その対策とは次のようなものだった。

・出産期女性の高い労働力(80%)と出生率
・第2子以降、20歳まで家族手当を給付(所得制限なし)
・子供が3歳になるまで育児休暇か時短労働可
・第2子以降の育児休暇手当は3歳まで受給可
・ベビーシッター利用に補助金
・同棲・婚外子の社会的認知

「ただし、フランスがここまでやっても、じつは人口増ではなく、現状維持であることも忘れてはいけません」と安井先生は警告する。

フランスが34.3%に対して、日本は12.5%

「女性の就労が進み、夫の家事・育児参加率が高い国や地域ほど、少子化が改善される傾向にあります。ですから、少子化対策としては第一に女性の社会進出の推進。それとセットで重要なのが男性の育児参加です」(安井先生)

1週間当たりの労働時間が50時間を超える労働者の割合は、フランスが5.7%に対して、日本は28.1%と先進国のなかでもダントツに高い。

また、男性の家事・育児時間の割合はフランスが34.3%に対して、日本は12.5%。

女性も家事育児をしながら社会に出る一方、男性も仕事を続けながら育児家事が選択できる、そういう社会環境が求められているのだ。

◆取材講座:「国際時事問題入門」(早稲田大学エクステンションセンター八丁堀校)

文/まなナビ編集室 写真/(c) Ekaterina Pokrovsky/fotolia

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