ツレない猫が可愛い理由を科学する

ツレないネコの心をさぐる(その2)@武蔵野大学

空前の猫ブームが続いている。2017年には日本国内で初めて、ペットの猫の数が犬を上回った。飼い主に従順な犬ではなく、ツンとつれない猫が愛されるのはなぜなのか。武蔵野大学教育学部講師・齋藤慈子先生が猫の魅力を科学的に考察する公開講座「ツレないネコの心をさぐる」より、武蔵野大学文学部3年の守田詩帆菜記者がレポートする。

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猫がかわいすぎる理由とは? (c)章吾馬場/Fotolia

空前の猫ブームが続いている。2017年には日本国内で初めて、ペットの猫の数が犬を上回った。飼い主に従順な犬ではなく、ツンとつれない猫が愛されるのはなぜなのか。武蔵野大学教育学部講師・齋藤慈子先生が猫の魅力を科学的に考察する公開講座「ツレないネコの心をさぐる」より、武蔵野大学文学部3年の守田詩帆菜記者がレポートする。

見知らぬ人より飼い主に冷たい猫

飼い主を見るとしっぽを振って駆け寄ってくるイヌに対して、ネコは視線を送るだけで「あら、帰ってきたの」とでも言うような態度を見せる。さらに、知らないヒトよりも飼い主に撫でられた時の方が噛みつくなど、理解しがたいネガティブな反応を見せたりする。

なぜネコはこうもツレないのだろうか。ネコのそっけない態度には2つ理由がある。

祖先は単独行動を好むリビアヤマネコ

その第一が、ネコの祖先種リビアヤマネコの影響だ。

イヌの祖先種がオオカミだということはよく知られているが、ネコの祖先種はあまり知られていないが、リビアヤマネコだという。

リビアヤマネコ (c)EcoView_Fotolia

リビアヤマネコは単独行動を好み、縄張り形成をする性質があった。リビアヤマネコから現在飼われているようなネコへと分化したのは1万年ほど前のことである。

ちょうどネコへと変化した1万年前にヒトが農耕を始めて、その貯蓄物にネズミが集まることに伴い、そのネズミを求めネコも群れをなして生息するようになった。群れをなして過ごすことでネコーネコ間での親和的行動が進化しネコ同士の社会性が身についた。その延長線で、ヒトとの交流を経てヒトに対する社会性も発達したという指摘もある。

祖先のリビアヤマネコの単独行動を好む自立心ある気質に加え、ネコ同士の交流やヒトとの交流で得た社会性を身につけたのが現在のネコなのだ。

犬と違って、野性的な方が有用だった猫

第二に、ヒトとネコの関り方は、ヒトとイヌの関わり方とは根本的に違うということだ。

まず、イヌはその形や大きさのバリエーションが豊富だ。これは人為淘汰の結果、形や大きさが多様化したものだ。

それに対し、ネコにはこれまで人為的に選択交配をしてこなかった。元々の性質を生かしたネズミ捕りとしての有用性があったネコは、野生的である方が有能とされ人為的淘汰はかける必要性がなかった。

そのため、ネコはヒトに媚びる必要がないまま進化を遂げた。ツレなくいのも当然だ。

猫の顔がかわいい理由

人間がかわいいと判断する顔には科学的に解明されている。それは幼児図式(Baby Schema)という形態的特徴をもつものだ。

これは動物の幼い個体に多く見られるもので、かわいらしい印象を持たせることで、保護欲求を喚起する働きがある。

具体的な特徴は以下の通りだ。
身長に対して比較的大きな頭
前に張り出た額
顔の中央よりやや下に位置する大きい目
小さい口元

イヌ、チンパンジーは幼体から大人で大きく頭蓋骨が変化するが、ヒトやネコはあまり変化が大きくない。それゆえに、ネコはずっと変わらず可愛らしい容姿をしているのだ。

感情をストレートに表現しないからこそよけいに

経験を積んだ個体が未経験の個体に教育する動物は、私たちヒトのほかでは、ネコとミーアキャットしか確認されていない。ネコの場合、母ネコが子ネコに狩りを教える際、子ネコの発達段階に応じて、だんだんと与える獲物を生きのいいものへと変えていくことがわかっている。

そっけないネコではあるが、ヒトの感情に寄り添うような行動をとることもある。単に意地悪でツレないわけでなく、愛情の示し方が異なるのだ。感情をストレートに表現しないとわかると、かえっていとおしく感じられてくる。

ただ、研究対象としては、ネコはなかなか難易度が高いと齋藤先生は言う。

「イヌよりも感情を表に見せないネコは研究対象として難しいところがあります。しかしだからこそ、ネコの研究はまだまだ伸びしろがあるともいえます。ネコという生き物は、見た目はもちろん、ツレないところもかわいいものです。見た目だけではなく、しっかり性格も理解したうえで、大切に育ててほしいと思います」(齋藤先生)

齋藤慈子先生(武蔵野大学教育学部講師)

〔学生記者の眼〕 ツンとして静かにしているネコのことを学び、ことわざの「猫をかぶる」とは上手いことをいうものだなと感じた。受講者にはネコ愛好家が多く、質疑応答の時間も充実しており、イヌ派の受講生がいてもネコ派に乗り換えるのではないかと思うくらい楽しい授業だった。名だたる文豪も猫愛好家が多いという。猫と文学の関りも調べてみたくなった。

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◆取材講座:「ツレないネコの心をさぐる」(武蔵野大学公開講座・三鷹サテライト教室)

取材・文/守田詩帆菜(武蔵野大学文学部3年)  

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