男性女性、7~70才の26人の騎士が集う
フェンシングと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、太田雄貴選手だろう。2008年の北京オリンピックで、日本のフェンシング界初の銀メダル(その後、2015年のモスクワ世界選手権で金メダル)を獲得して一躍有名になり、多くの人々が初めてテレビでフェンシングの試合を見たものだった。
確かにカッコよかったけど、速すぎて何が起きてどっちが勝ったのか、判定を見なければさっぱりわからず。競技のおもしろさを理解することなく、それっきりになってしまっていた。その無垢(無知?)な状態のまま、下調べもせず、中央大学の「フェンシング教室―基礎から応用まで 楽しく学ぶフェンシング―」(クレセントアカデミー2016年秋期講座)へ来たのである。
この講座は、創部65年の伝統を誇る中央大学フェンシング部の協力を得て、ひとりでも多くの人にフェンシングの魅力を伝えることを目的に2015年に開講。講師の冨田智子先生(中央大学経済学部兼任講師)は、ロサンゼルス&ソウルオリンピックに出場した経験をもつ。
つまり、一度もフェンシングの経験のないズブの素人でも日本のフェンシング界を牽引するトップクラスの指導者から直接レッスンを受けられるのだ。
元オリンピック選手にお話できる機会などなかなかない。以前からのギモンをぶつけてみた。
「手足も長く背も高い西欧人に日本人が勝てるのは、なぜなのでしょう?」
冨田先生によれば、この手足の短さが逆に有利になることがあるという。剣も長いので懐に入られてしまうと、何もできなくなることもあるとのこと。それを聞いて、太田雄貴選手がオリンピックで見せた背面への突きを思い出した。
なるほど。柔よく剛を制す、ならぬ、短よく長を制す、ということもあるのですね。
広い体育館に、老若男女30人ほどが集まり始めた。本当に、老・若・男・女である。すでに白い防具に身を包んだ人もいれば、ジャージ姿の人もいる。
まずは、ストレッチやダッシュなどの準備運動からスタート。大学のオープンカレッジの生徒ってシニアを中心とした大人ばかりかと思っていたら、ここでは小中学生も多い。最年少7歳~最年長70歳の生徒が、同じ土俵(?)で平等に習い、競い合う。
本格的なレッスンが始まると、無垢(無知)な私にも、初心者とそこそこできる人との差がなんとなくわかる。
たどたどしいながらも大人に混じって一生懸命やってる子どもたちもカワイイけれど、そこそこできる人は、姿勢が違う。コスチューム…じゃなくて、防具のこなれ具合が違って見える。
ところでこのコスチューム…じゃない防具は、なんと、貸してもらえるのである。とくに成長期の子供はどんどんサイズが変わる。体が大きくなるのに合わせて買い換えなくてよいから、本当にお得。ただ、ずっと続ける人は、やはり自分専用の防具がほしくなるという。