その2、イタリア人もLとRの違いがわからない
意外なことだけど、イタリア人もLとRの発音は同じなのだそうだ。
「えっ、Rは巻き舌でしょ?」
と思う人は多いだろう。
先生は、
「映画やCDテキストは、格好つけて巻き舌で発音しているけれど、多くの人のLとRの発音はほとんど同じ。だから日本語のラリルレロで発音してまったく問題ない」
という。
LもRも関係ない、発音もローマ字読み。先生は、
「英語やフランス語は、読み仮名をカタカナで振ると実際の発音とは異なる場合が多く問題だけど、イタリア語はカタカナで完璧に表現できるんです」
と言う。
イタリア語の場合、つづりを覚えるのが苦手な人は、カタカナで書いて音で覚えていいのだ!
その3、授業の決まりは「辞書を使わないこと」
私たちは、なにかっつーと辞書をベラベラめくって単語を調べることがえらいこと、と教わってきてやしないだろうか。マイッツァ先生の授業では違う。
授業中、生徒たちはひとりずつ、イタリア語で日記を書いて発表する。その際、言いたいことがイタリア語でわからないとき……つい、辞書を引いてしまう。
「みなさんはもう1〜3年もイタリア語を勉強してきています。その間に聞いたことがない単語は、実際にも使う頻度が低い可能性があります。日本語でよく使う言葉でも、イタリア語では使わないかもしれない。それは辞書からはわからないこと」
辞書を引くクセは、実際の会話の中でもさまたげになることが多い。会話中に3秒黙ったら次の会話に移ってしまうだろう。辞書を引くヒマなんかはない。それよりも、自分の知っている文法と単語で、自分の言いたいことを言う訓練のほうがはるかに大事なのだ。間違っても、言葉足らずでも、なにか言葉に出して「伝えよう」という意思があれば、相手はきっと理解しようとしてくれる。なぜなら私たちの顔は平たいのだから。
授業の端々に差し込まれる雑学が習得を後押しする
マイッツァ先生の授業の魅力は、こうしたさまざまな方法で、語学への敷居を低くしてくれること、そして、授業の合間に言語のバックボーンや雑学を話してくれることだ。
「イタリアは、フランスやスペインに侵略された歴史がある。そのため、それらの言語が入り交じって成り立っている。もともと使われていたラテン語は、知識階級が使っていたため、口語と文語のバランスがいい。しかしイタリア語は、いろんな言語が会話として入り交じって成り立ったので、圧倒的に話すのに向いている言語なんです」
「イタリア語には、英語の a に当たる不定冠詞がない。ローマ人はエンジニアなので数の感覚が優れているから、曖昧な言い方はしない。英語に one と a が共存しているのは、ローマ人に侵略されたから。日本語で『部屋に1匹の猫がいる』とは言うけれど『部屋に、ある猫がいる』とは言わないでしょう。それはイタリア語も同じです」
「イタリア語で『脚』は gamba。サッカーチームの大阪ガンバは、「がんばる」と脚の「ガンバ」をかけた言葉なんですね」
言語は、その成り立ちや環境が深く影響している。マイッツァ先生がこうしたバックボーンを話してくれることで、言語への敷居が、ぐっと低くなる。イタリア語の素養がなくても「ガンバ」が「脚」だということは生涯忘れないだろう。
マイッツァ先生の授業の最新情報は、TwitterやFacebookなどでも公開されている。「アントニオ マイッツァ」で検索して、あなたも今日からイタリア語を始めよう。
〔今日の名言〕 「テキストは小難しい言い方をするのが好き。覚えなくていい文法はたくさんある!」
〔大学のココイチ〕短期大学部製菓学科による製菓学科販売所。実習で作った和菓子や洋菓子を売っている。目白大学の密かな名物だ。
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取材講座データ | ||
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イタリア語会話初級2 | 目白大学エクステンションセンター | 2016年度秋期 |
2017年2月8日取材
文/和久井香菜子 写真/taka – Fotolia