なぜ仏文学者の蔵書1万冊は図書館で廃棄されたのか

千田稔奈良県立図書情報館館長に聞く【図書館問題】

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奈良県立図書情報館。図書館の蔵書問題は全国の図書館の共通の課題となっている

奈良県立図書情報館。図書館の蔵書問題は全国の図書館の共通の課題となっている

─スペースだけの問題ではないといいますと?

千田:いま図書館に並んでいる本を見ると、汚れないようにビニールみたいなものでラップされているでしょう。あれはすべて新刊を購入すると、納入業者がやってくれるんです。分類までつけてくれて。だから新刊本は楽なんです。

しかし中古本となると、こちらが分類して、きちんとビニールがけする必要がある。この整理に時間と手間がかかる。それで嫌がられるということもあります。でもそこを嫌がっていては、文化は残らないと思うね。

その土地のことを知っている司書に本を選んでほしい

─公共図書館の運営を民間委託する動きもありますが、それについてはどうお考えになりますか?

千田:大変に微妙な問題ですが、あくまでも図書館の蔵書を選定する立場として考えると、今のところは自主運営にこだわりたいと考えています。いくつか理由がありますが、ひとつは、公共図書館はその土地の文化の集積地なのだから、その土地のことをよく知っている司書に本を選んでほしいから。これは図書館で開催するイベントにも言えることで、企画会社に依頼するだけでは、本当によいものが企画できないと思います。

また、図書館に書店を併設するような形も出てきていますが、本が公平に扱われないという面もあるのではないか。たとえばガイドブックのような実用的なものを例にあげた場合、買われる(書店に置いてもらえる)ガイドブックと、貸し出ししかされない(書店に置いてもらえない)ガイドブックが出てくる。その差は何か。その理由は利用者はわからないし、図書館の司書もわからないかもしれない。

図書館について思うのは、日本はもっと図書館について考えなければならないと思いますね。僕は大学図書館についても言いたいことがあります

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