同じ新刊書ばかり置くからスペースがなくなる
─最近図書館のニュースが多いと感じます。とくに寄贈図書の無断廃棄のニュースは大きな衝撃でした。スペースの問題はそれほど大きな課題になっているのですね。
千田稔館長(以下、千田):スペースがないないというけど、それはベストセラーを、しかも同じ本を何十冊と買うからですよ。いまは図書館の利用率も問われるから、ベストセラーをたくさん揃えれば貸し出し数はあがる。しかしそれだけでは図書館の機能は果たせません。
─図書館の機能といいますと……?
千田:図書館は「本との出会いをつくる場」です。書店も書棚のつくりかたがとても大切でしょう? 図書館だって同じです。ある本を探しに来たらそのそばに関連した本が並んでいる、手に取ってみたら面白そうだ、これも借りて読んでみようか、と。これが図書館の基本の機能です。一年に一回しか貸し出されないような本であっても、必要であれば備えておくべきだと思う。
寄贈書問題はスペースだけの問題ではない
─京都では、桑原武生京大名誉教授の寄贈図書を、図書館員の判断で廃棄してしまうという事件があったばかりです。現実に寄贈図書は増えているのですか?
千田:増えてますよ。大学を辞めた先生は、みんな本をどうするかで悩むんです。貴重な本がたくさんあっても自宅には置けないし、自分が亡くなったら家族が捨ててしまうかもしれない。そこで図書館に寄贈したいということになる。
ところが、書庫がいっぱいですからと、断る場合が多くあります。僕はそれに反対で、どんどん受け入れるべきだと思っています。たとえば、いったんうちで引き取って情報を流し、ほかの市町村で「こんな本が欲しい」という声があれば、分配するとかの仕組みをつくってはどうかと思う。ただ、寄贈図書の問題はスペースだけの問題ではないんですよね。