なぜガラシャはクリスチャンなのに死を選べたか?

日本中世史講義 戦国ななめ読み(その2)@早稲田大学エクステンションセンター

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ガラシャはなぜ死を選べたのか?

「しかし日本の現場を知っている宣教師たちは、『腹を切らないで逃げろ』などと言っても誰も聞かないことは、よーくわかっていた。武士が腹を切るのは、命を懸けて自分の名誉を守る行為。それをダメだなどと言えるわけがない。

ガラシャも事前に、当時、大坂に潜伏していた宣教師オルガンティーノに訊ねたらしい。そこでオルガンティーノがなんと答えたか、ということなんですが、その答えはそのレポートに“ない”んです。

“ない”んだけど、“彼女は大変満足した”とレポートにある。つまり、どういう問答があったか書かれてあるべきなのに、書かれていない。これは、イエズス会側がわざと残さなかったのだ──というのが、安廷苑さんの推察です。僕はそれは正しいと思う。

たぶんオルガンティーノは、自害しても問題はない、それはキリスト教者として名誉ある死であり、殉教にも等しい死である、というようなことを、彼女に伝えた。で、彼女は大変満足して、自分の行動を決めた。そういうふうに理解できる──と、安廷苑さんは書いている。その推察は的を射ていると思う」

かくてガラシャは亡くなり、大勢の家臣たちとともに、細川邸は炎に包まれた。これにビビった石田三成は、大名の家族を人質に取るという当初のプランを中止せざるをえなくなった。それがどれだけ東軍の武将たちを安心させたことか。つまり、細川父子の行動が明智光秀を滅ぼす遠因になったように、ガラシャの行動は石田三成を滅ぼす遠因となった。

そしてもうひとつ、細川幽斎もその狸ぶりで家康の勝利に貢献したのである。

(続く)

〔大学のココイチ〕

あるいは東京メトロ東西線の中野駅から、早稲田大学エクステンションセンター中野校までは10分程度かかる。中野ブロードウェイを通ってお店を見ながら行けば、15分、20分はあっという間に経ってしまうので、初めて行くときは時間的余裕を持って。

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取材講座データ
日本中世史講義 戦国ななめ読み 早稲田大学エクステンションセンター中野校 2016年度秋期

2016年11月29日取材

文/まなナビ編集部 

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