スカッと明るいアメリカよりも
イギリス貴族の世界、ましてや階級・宗教・ネイションなんて、日本人にはいまいちピンとこないのではと思いきや、こんなに夢中になってしまうのには、日本とイギリスの共通項が大きいと松園先生はいう。
「島国であり海洋国家。王政・天皇制がある。自由と民主主義を愛する。規律やマナーを愛する。このように、政治や風土から、メンタリティーに至るまで、日本とイギリスは共通項が多いんです。
近代日本が最初に海外と同盟を結んだのはイギリス。1902年の日英同盟が最初です。また、明治の初めから、日本のお雇い外国人のほとんどは英国人でした。車も同じ右ハンドルですしね。
『ロンドンに飽きた人は人生に飽きた人である』という諺がありますが、これをイギリスに置き換えてもよいかもしれません。とくに日本人にとっては、理解できるようなできないような、“飽きない国”なのです」
確かに、スカッと明るいアメリカより、ちょっとガンコで独自の道をいくイギリスに、日本人は共感を抱きやすいのかもしれない。故・ダイアナ妃のことも、みんな異様なほど大好きだったし!
『ダウントン』でイギリスを読み解くことが興味深いのはもちろんだが、こうしたストーリー、いつかどこかで観たような……。そうだ!重厚でどろどろの源氏物語や大奥の物語だ。あるいはありえない設定やどんでん返しで’70~80年代に一世を風靡した大映ドラマ(山口百恵主演『赤いシリーズ』、『スチュワーデス物語』、『スクール☆ウォーズ』など、大映テレビが制作したドラマ)にも通じるかも。ドラマってやっぱりこうでなくっちゃね、というところも、日本人の萌え心を煽るのだ。
『ダウントン』の日本での放送はそろそろ終わりを迎えてしまうけれど、記者の周囲ではDVDや動画配信サービスなどで同作を観始める人が増えている。そこで、本講座で取り上げられた『ダウントン』を見るときの大切なポイント、知っておくといっそうおもしろくなる背景を、次回から2回に分けて掲載する。主人公のクローリー家の人々、使用人たちが複雑にからみ合って、何度観ても新しい発見がある。観始めたら抜けられない底なし沼にはまること間違いなしだ。
(「『ダウントン・アビー』に学ぶ英国の階級・宗教・民族」に続く)
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イギリス児童文学の名作を訪ねる旅
19世紀イギリス美術の世界を訪ねて
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取材講座:「イギリス貴族『ダウントン・アビー』からみる〈戦間期〉英国─新しい時代の息吹と貴族社会」(早稲田大学エクステンションセンター早稲田校)
文/まなナビ編集部 写真/(c)wayne、(c)Dutourdumonde / fotolia