緊張をほぐすアイスブレイクから
参加した講座は「楽しい音楽体験ヴォイス&ビート~からだが楽器!!聴こえたままに歌おう、たたこう~」。参加資格は、小学1年生から3年生までの小学生。音楽大好き、ダンス大好きな小2の娘も、パンフレットを見て、「これ、楽しそう!」と声をあげたものだ。
ひとつ心配なのは初めて顔を合わせる者どうし、子どもたちが恥ずかしがったりしないかということだった。始まる前に講座のコーディネーターの聖徳大学児童学部児童学科渡辺明子准教授に確認したところ、明るい笑顔で「大丈夫ですよ」。
「この講座は昨年から始めたものですが、当初から児童学部3年生のゼミ生が加わって、参加した皆さんをサポートしています。ちょっとわからないことがあっても、気兼ねなく誰かに聞いてください。といっても最初は皆さん緊張するものですよね。なので最初はアイスブレイクから始めます」
アイスブレイクとは、初対面の人が一堂に会する時、緊張をほぐすためにとる様々な手法をいう。たとえば自己紹介をし合ったり、みんなで参加できるゲームをしたりする。講座のスタート前から、渡辺先生も10人のゼミ生も、演奏したり歌を歌っていたが、これも初めてどうしの緊張をほぐすためのものだったのか。
アイスブレイクから、講座が始まった。体でリズムを取る楽しさを、先生とゼミ生全員で伝える。たとえば蛇口をひねるジェスチャーをしながら、隣の人に水をかけるジェスチャーをしたり、拍手でリズムを取っていくにつれて、子どもたちの顔もどんどん明るくなってきた。周りで見学している親のほうも、ほっとした表情が浮かび始めた。
いつもは座りっぱなしの娘が飛び上がった
タンタンタン。タタタタタ。ターン、タッタ、タタタタタン。
先生の拍手にあわせて、小学生たちが真似ていく。スピードが出てくると、必死になって真似をしている。先生が、手の他に肩をたたき、膝をたたく。音が違う。拳を振り上げ、ヤー!っと声を出す。ゲームやマンガが大好きで、いつもは座りっぱなしの娘が飛び上がったり、手を大きく上げて体全体をゆすっている。
渡辺先生によれば、拍手は楽器、からだ(声)も楽器。講座タイトルの「楽しい音楽体験ヴォイス&ビート~からだが楽器!!聴こえたままに歌おう、たたこう~」がよくわかった。ボディーパーカッションだ。手で自分の体をたたいてみると、てのひらどうしをたたく拍手と、肩や膝をたたくのでは音が違う。体の構造を学ぶことにもつながりそうだ。
タンバリンの穴には、指は入れない
小2の母である記者が今日初めて知ったこと。それはタンバリンの穴に指は入れてはいけないということだ。親指を膜の上に置き、胴を人差し指と他の指でつかむのだという。
これは、サポーターのゼミ生が参加した楽器演奏で、渡辺先生から聞いた話だ。昨年からゼミ生もサポーター役として参加しているが、楽器演奏を披露するのは今年が初めてだという。皆さん得意の楽器を持ち寄って、「おばけなんてないさ」「ミッキーマウスマーチ」を演奏してくれた。楽器もさまざま。トロンボーン、サックス、フルート、リコーダー、ギャザリングドラム、そしてカホンという打楽器も。
子どもたちに楽器が用意されていた。お馴染みのトライアングル、カスタネット、タンバリン、そして民族楽器の子ども用のジャンベやコンガなども用意され、小学校ではなかなか見かけない楽器に触った子どもたちは大はしゃぎ。渡辺先生はトライアングルを持っていた子に、「空気の振動で音が出るのよ。空気に響かせて」と説明していた。「空気に響かせて」とは、とても素敵な表現だ。
ただしこの講座は音楽の授業ではない。きれいな音を出す必要はない。うまく演奏する必要はない。好きなように音を出し、そのリズムに身を任せていくものだ。たとえばカスタネットをたたきながら自己紹介をしていくと、名前が2文字の子(たとえば「まり」)と4文字の子(たとえば「やすひろ」)ではリズムが違う。それを子ども自らが発見して、面白がるところに、この講座の楽しさがある。中には同じ名前の子がいて盛り上がる場面もあった。
「親が率先して声を出して楽しむのがいいですよ」
最後に、渡辺先生に家庭での音楽の親しみ方のコツを聞いた。
「とにかく、親も一緒に歌を歌うことです。キラキラ星でも、なんでもいいんです。そして、ヘタとか上手とか評価するのではなく、楽しむのです。私は、音痴なんていないと思っています。親が率先して声を出して楽しむのがいいですよ。楽器のお稽古をさせたいという親御さんもたくさんいらっしゃいますが、まずは拍手と歌で音楽やリズムを楽しむことから始めてはどうでしょうか。お子さん参加してどのような感想を持たれましたか?」と逆にこちらに質問も。
「たくさんの楽器に触れることができて、とても楽しかったと言っていました」と素直な感想を答えた。大人はなんでも頭で考えてしまうが、音を出す楽しさにぴょんぴょん飛び跳ねている娘を見て、これが音楽の本質なのかなあと思ってしまう、そういった思考こそが、そもそも大人のつまらなさなのかもしれない。
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文・写真/まなナビ編集室