「優先すべきことを優先する」ヤマトの経営哲学。商業貨物もバッサリ

名経営者に学ぶ

amazonの年間2億個を優に越える荷物を抱え集配の現場がパンク寸前だと昨春から報道されていたヤマト運輸。1月30日の報道によれば、amazonを含む大口顧客の6割が値上げを受け入れたという。現代の便利な生活のしわ寄せが生み出したともいえるこのバトルにもようやく決着がついた。ここで改めてヤマトの経営哲学を振り返ってみよう。

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全国の高速道路を今日もトラックが行き交う。写真は首都高速道路兜町付近

amazonの年間2億個を優に越える荷物を抱え集配の現場がパンク寸前だと昨春から報道されていたヤマト運輸。1月30日の報道によれば、amazonを含む大口顧客の6割が値上げを受け入れたという。現代の便利な生活のしわ寄せが生み出したともいえるこのバトルにもようやく決着がついた。ここで改めてヤマトの経営哲学を振り返ってみよう。

「サービスが先、利益が後」

武蔵野大学の公開講座「言葉から探る経営と生き方─生活に欠かせないコンビニと宅急便」で、武蔵野大学准教授の渡部博志先生は、次のように語る。

「日本で初めて個人向け宅配である“宅急便”を始めたのは、大和運輸の2代目社長だった小倉昌男(1924-2005)です。小倉の経営哲学の根本は、“サービスが先、利益が後”でした。よいサービスを提供すれば、利益はついてくる、という考え方です。

その精神は今もヤマト運輸に中に脈々と流れています。また、小倉は、1976年に個人向け宅配である“宅急便”を始めますが、事業が今ほど大きく育っていない時期に、それまで引き受けていた商業貨物をバッサリ止めました小倉は優先すべきことを優先する、筋金入りの経営者でした。今回のヤマトの判断も、そうした経営哲学ゆえのことでしょう」

「安全第一、能率第二」

さらに講座では、“車が先、荷物は後” “安全第一、能率第二” という経営哲学が紹介された。この一つの典型例が、ヤマトが集配に使っているウォークスルー車だ。

クロネコ ウォークスルーバン
ヤマト運輸のウォークスルーバン

ヤマトといえば、上部が肌色で、下部が緑のこの車だ。この車はウォークスルーバンといわれるもので、貨物の集配時の仕分けなどの車内作業や荷物の上げ下ろしが便利なように、天井が高く横のドアが引き戸になっている。“宅急便”の生みの親である小倉が、トヨタに宅急便向けのウォークスルー車の開発を依頼し、いま私たちが毎日目にしている、あの車が誕生した。

ヤマトのウォークスルーバンでは左側が大きく開くので、運転手は安全な歩道側に出て作業できるようになっています。“安全第一、能率第二” “車が先、荷物は後” の哲学は、このような部分にも垣間見られるように思います」

この経営哲学があればこそ、今回の件も決断できたことだったのだろう。

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渡部博志
わたなべ・ひろし 武蔵野大学経済学部准教授 しあわせ研究所主任
松下電工株式会社(現、パナソニック株式会社)勤務を経て、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、博士課程単位取得後退学。武蔵野大学政治経済学部講師となり、平成28年度より経済学部経営学科准教授。平成29年度より学生部長。『企業戦略白書Ⅶ-日本企業の戦略分析:2007』(東洋経済新報社、共著)、「組織に影響を与える新任リーダー特有の要因」(『武蔵野大学政治経済研究所年報』第9号所収)など。

◆取材講座:「言葉から探る経営と生き方─生活に欠かせないコンビニと宅急便」(武蔵野大学社会連携センター三鷹サテライト教室)

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文/まなナビ編集室 写真/SVD

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