「ありのまま」「等身大の自分」信仰は不幸の始まり

哲学 ― 常識批判の基盤を形成するために @早稲田大学エクステンションセンター中野校

  • 公開 :

人が生きづらい理由とは

人が生きづらい理由は〇〇されないから

どこかに『ハダカの自分』がいると考えている人がいますが、そんなものはありません。あるのは、すべて『誰かとの関係の中の自分』なのです。

ありのままの自分がいる、等身大の自分、ハダカの自分がどこかにいると考えるのは、不幸の始まりです。探したとしても決して見つかりません。ユクスキュルの言っていることは生物学でありながら、自分のこととして考えられる哲学なのです

ありのままの自分でいることに憧れる人は少なくなさそうだ。だがそれは幻想だという。結局は、自分の存在というのは、誰かとの関係の中で成り立つからだ。

人が生きづらいのは、ありのままでいられなかったからではなく、他人から認められないから。『アナと雪の女王』でも、エルサが生きにくかったのは、認めてもらえなかったからだ(しかも自分の両親に!)。結局、大団円を迎えた後も、彼女を否定する人間が現れたら、また辛くなることには変わりがない。

誰もが他人を尊重できたら、自分を否定されることもなく、生きづらさも軽減されるだろう。となると、自分にできることは「ハダカの自分」になることではなくて、他人を尊重することに尽きそうだ。

〔あわせて読みたい〕
数学や物理学べば発達障害への偏見の愚が分かる

〔哲学を学ぶ講座〕
西洋政治思想
初めての哲学対話

取材講座:「哲学 ― 常識批判の基盤を形成するために ― 」の第6回「人間と動物―動物は人間よりも劣っているのか―」(早稲田大学エクステンションセンター中野校)
文/和久井香菜子 写真/和久井香菜子(講座写真)、SVD、(c)Saruri、(c)Robert Kneschke、(c)Africa Studio / fotolia

1 2 3

-教養その他, 自己啓発, 講座レポート
-, , ,

関連記事