死亡例も多いO-157 36年前に出現したこの食中毒の大元は

河島尚志東京医科大学教授「子どもの下痢と血便」(その5)

昨夏、群馬県前橋市で発生した腸管出血性大腸菌O-157の集団感染。多くの感染者を出し、3才女児が死亡するという事態となった。東京医科大学の公開講座「子どもの下痢と血便~O-157を含めて」で、同大主任教授で小児科科長でもある河島尚志教授にO-157について学ぶ。

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昨夏、群馬県前橋市で発生した腸管出血性大腸菌O-157の集団感染。多くの感染者を出し、3才女児が死亡するという事態となった。東京医科大学の公開講座「子どもの下痢と血便~O-157を含めて」で、同大主任教授で小児科科長でもある河島尚志教授にO-157について学ぶ。

堺市の0-157感染、19年後に亡くなった女性も

昨夏、群馬県前橋市で、総菜によるO-157の集団感染が出たことは記憶に新しい。不幸なことに、3才女児が亡くなったが、その感染原因は不明のままである。

O-157の感染原因を後から特定するのが難しいのは、非常に感染力が強く50~100個の菌量で感染することや、感染から症状が現れるまでに5日から10日と比較的潜伏期間が長いことによる。

O-157の恐ろしさを全国に知らしめた1996年の大阪府堺市の集団食中毒の時もそうだった。学校給食を食べた児童と教職員合わせて数千人が感染し、さらにその家族にも感染が拡大、不幸にも当時小学生だった女児3人が死亡した。当初、カイワレ大根が原因だとされたが、その後の調査で否定され、結局原因はわからないままだった。

この堺市の集団感染では、多くの児童が溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し、その中の幾人かはその後も治療を続けていたが、事件から19年後の2015年、その中の1人がその後遺症で死亡していたことがその後判明した。

これほど人体に大きなダメージをもたらすO-157、しかしO-157は昔はなかった菌なのだと、河島教授は語る。

O-157感染の大元は肉。しかしそれ以外からも

「O-157は昔はなかった菌なんです。アメリカで肉用牛を増産するため抗生物質を投与した結果、出て来た菌だと言われています。輸入牛肉の3%~5%にいるので、牛肉の生食はできるだけ避けたほうがよいでしょう」と河島教授。

厚生労働省のHP「腸管出血性大腸菌Q&A」にはこうある。

腸管出血性大腸菌は昭和57年(1982年)アメリカオレゴン州とミシガン州でハンバーガーによる集団食中毒事件があり、患者の糞便からO-157が原因菌として見つかったのが最初で、その後アメリカだけでなく世界各地で見つかっています。(厚生労働省HP「腸管出血性大腸菌Q&A」より)

O-157は50~100個という非常に少ない菌量で感染する。そのために感染が拡大しやすい。

1次的な感染源としては、肉類、焼肉、ハンバーガー、ローストビーフ、レバ刺し、ユッケなどだ。家畜の糞便などを通じて土壌も汚染されるし、調理器具や手やドアノブなどに付着した菌でも感染することから、肉以外の牛乳、野菜、果物などからも感染することがある。

年間3000人から4000人が発症。その症状は?

河島教授は「O-157はニュースで騒がれている時だけの感染のように思われているかもしれませんが、年間3000人から4000人が発症しています」と語る。

典型的な初期症状は次のようなものだという。

〇まず水溶性の下痢が始まる。(下痢が起こる人は45-55%)。
〇やがて鮮血便が頻繁に続くようになる。(発症後2日後くらいから血便が現れる人は30-35%。その血便は「all blood no stool(便ではなくすべて血液)」と表現されるほどの激しい血便となることも)
〇腹部に鋭い痛みが走る。(腹痛が起こる人は40-50%)
〇熱はあったりなかったりする。(発熱する人は12-20%)

だいたいは4日から8日で治るというが、怖いのは発症5日から10日後に、小児患者の5%から10%が溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併することがあることだ。

怖い溶血性尿毒症症候群(HUS)

溶血性尿毒症症候群(HUS)とは、主に小児が発症するもので、腸管出血性大腸菌(Oー157など)や赤痢菌に感染した際、菌の出すベロ毒素が腎臓の毛細血管内皮細胞を壊し、そこを通過する赤血球を破壊することで溶血がおき、尿毒症を発症するものだ。

けいれんや急性腎不全を起こし、その3%から4%が脳症を併発し重篤となることがある。

Oー157だけなら抗生物質でやっつけることができるが、菌が死滅してもベロ毒素は残る。そのため、とくに初期については抗生物質を投与した方がよいという意見と、抗生物質を投与しない方がよいという意見の両方があるという。

感染最多は0~4才。肉はしっかり加熱して

ちなみに、O-157と同じく毒素を持っている腸管出血性大腸菌はほかにもあり、O-26、O-111、O-128、O-145などがある。これらも感染すると、菌の出す毒素で同じように腎不全に至ることがある。

感染のピークは夏場。感染する年代は0~4才が最も多く、次に5~9才。また、家庭内で感染するケースが非常に多く、全体の3分の2を占めるという。

感染予防は以下のとおり。

〇菌の繁殖を防ぐために、肉・魚・野菜などの生鮮食品は適正な温度で保存し、新鮮なうちに調理する。

〇汚染を防ぐために、手や調理器具はしっかり洗浄する。

〇腸管出血性大腸菌をはじめとする大腸菌は熱に弱いので(75度で1分加熱すれば死ぬ)しっかり火を通す。

とくに注意したいのは、ハンバーグやメンチカツなどだ。肉をこねる過程で、表面についていた菌を中に押し込んでしまうことがある。中心まで75度にしようと思うと、けっこう加熱しなければならない。

最後に、下痢で血便が出るような時は、早めに近くの医療機関に行き検査をしてほしい、と河島教授は言い添えた。

河島尚志(かわしま・ひさし)
東京医科大学小児科学分野主任教授、東京医科大学病院副院長、小児科診療科長
1985年東京医科大学大学院修了、同大学病院小児科臨床研究医、大月市立中央病院部長などを経て、現在は東京医科大学病院にて小児科診療科長を務める。専門は感染免疫、膠原病、栄養消化器肝臓疾患、川崎病など。

◆取材講座:「子どもの下痢と血便」(東京医科大学病院 )

文/まなナビ編集室 医療・健康問題取材チーム 写真/東京医科大学病院提供 fotolia/Y.YAGISAWA

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