54才で大学院進学。学部の1年生と一緒に受講も
決定的となったのは、’00年、大相撲の優勝力士への大阪府知事賞贈呈をめぐって、当時の太田房江知事(現・参議院委員)が、女人禁制の土俵にあがりたいと発言したことだった。横綱審議委員だった内館さんは、太田府知事の意見に反対するも「もっと相撲の歴史を学ばないと、説得力がない」と、宗教学を本気で学ぶことを決意。54才の時、東北大学大学院文学研究科修士課程の社会人特別選抜に合格、進学した。
「私は大学が美術系(武蔵野美術大学)だったので、宗教学の基礎知識がゼロだったんです。それで、教授から学部の1年生と一緒に概論をいくつか受けてくださいといわれ、単位を取るためにはしょうがないと取ったんですよ」
テレビ局の小さな部屋で生きてきたんだなと
その中の一つにキリスト教史があった。
「私は相撲史をやるために大学院に入ったから、全然キリスト教なんて興味なかったんですけどね。でもそのキリスト教史の授業で、“ヘレニズム文化、ヘブライズム文化”っていう言葉が出たときに、うわ~ってすごく懐かしく感じたんです。そういえばあったな~、大学受験の時に一生懸命勉強したな~って。社会に出たらまず聞かないでしょう、ヘレニズムなんて(笑)。
でも同時に、ショックでしたよね。窓のないテレビ局の小さな部屋で、主役を誰にするかとか、ラストで翌週に引っぱりたいとか、視聴率に一喜一憂しながら、スタッフと毎日打ち合わせを続けて、私は20年間生きてきたんだなって。もちろんそれはそれでとても楽しい仕事ではあったけど、遠くに目がいかなくなってたんだなって気づかされたんです」