ピコ太郎の国連登場で話題の“SDGs”って一体なんなのか

SDGs(持続可能な開発目標)-貧困・社会的排除と居場所論(その2)@上智大学

7月17日、ニューヨークの国連本部で開かれたレセプションで、「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」で世界中に知られるようになったピコ太郎がSDGs(持続可能な開発目標)の認知度を上げるための「PPAP」の替え歌を披露して話題になった。上智大学の田中治彦教授によれば、持続可能な開発目標を達成するためには貧困や社会的排除を解決することが求められ、そのために“居場所”が必要になるのだという。

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動画と画像は外務省の許可を得て掲載しております。

7月17日、ニューヨークの国連本部で開かれたレセプションで、「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」で世界中に知られるようになったピコ太郎がSDGs(持続可能な開発目標)の認知度を上げるための「PPAP」の替え歌を披露して話題になった。上智大学の田中治彦教授によれば、持続可能な開発目標を達成するためには貧困や社会的排除を解決することが求められ、そのために“居場所”が必要になるのだという。

貧困とは社会的圧力で能力が発揮できない状況

7月、外務省はSDGsの知名度向上のために、タレントのピコ太郎が登場するPR動画をYouTubeで公開した。それが冒頭の動画だ。さらに7月17日には国連本部で行なわれた日本政府主催のレセプションに、ピコ太郎が岸田文雄外相とともに登場してPPAPの替え歌を披露した。

こうした取り組みをしないと関心を持たれないくらい SDGsは、まだまだ分かりにくいテーマだ。上智大学の田中治彦教授による「SDGs(持続可能な開発目標)-貧困・社会的排除と居場所論」講座は、 “SDGs” と “貧困” と “居場所” の関連性を説くものだ。(別記事「職場で評価されず家では邪魔者、“居場所”ある?」)

“居場所” について、田中先生は3つのポイントを挙げた。
空間:単なるスペースではなく、リラックスできる空間をいう。そのためには次の “関係性” の要素が大切だ。
関係性:リラックスできる空間とするため、安心できる人間関係があるかが大事。
時間軸:自分の将来が展望できるかどうか。若い人は10年後の自分が想像できるかどうか。中高年であれば定年後の自分が想像できるかどうか。

田中先生は、“居場所” は、貧困や社会的排除から逃れるために必要なものだという。では “貧困” とはどういう状態をいうのだろうか。かつては、物がない、金がない、食べ物がないなど、“欠乏”した状態を “貧困” と私たちは呼んでいた。

ところが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)名誉教授のジョン・フリードマン(2017年6月逝去)は、「貧困とは社会的な力のはく奪」だと唱えた。本来、人間が持っている能力が社会的圧力によって狭められ、そのために能力を発揮できない状況を “貧困” と定義したのだ。

食べ物がないから食べ物をあげる、では解決しない理由

社会的圧力で能力が発揮できない状況とは、具体的にどういう状況だろうか。フリードマンは以下の8つを貧困の要素として挙げた。

(1)資金がない
(2)労働と生産道具がない(生活を立てるための手段、たとえば仕事や畑などがない)。
(3)情報がない(生活保護の仕組みなど、貧困から助けてくれる情報が得られない)。
(4)知識と技能がない(学校教育や職業訓練を受けていない、受けられない)。
(5)家族や地域社会などのネットワークがない(家族や社会が頼りにならない、助けてくれない、遠く離れている)。
(6)助けてくれる社会的組織がない(労働組合、NGOなどの助けがない)。
(7)生存に費やす時間以外の余剰時間がない
(8)防御可能な生活空間がない(プライバシーの欠如も)。

「食べ物がないなら食べ物を与えればいい、お金がないならお金を与えればいい、ということでは貧困は解決しないのです。お金は使ってしまえばなくなるし、ずっと与え続けなければならなくなる。しかし、そのお金をいかして学校に行ったり技能を身につければ、生活手段が得られます。このように、この8つの欠如を総合的に補っていくことが大切です。なかでも、学校や職業訓練システム、社会的ネットワーク、余剰時間、生活空間はまさに、人が認められるために必要な“居場所”と言い換えてもよいものです」(田中先生。以下「 」内同)

「SDGs(持続可能な開発目標)-貧困・社会的排除と居場所論貧困・社会的排除と居場所論」講座

こうしたものは、自分の努力だけで獲得できるものではない。エンパワーメント(個々人が能力を開花させ、貧困から脱して社会を変革するという考え方)を実現するためには、社会全体がサポートする仕組みが大切だ。連帯したり、アイデアを語ったり、社会に貢献したりできる、高次の “居場所” ができ、人の能力が開花してこそ持続可能な社会が見えてくる。援助をするだけ、受けるだけでは社会は持続できないところまで来ているのだ。

ここに、講座タイトル「SDGs(持続可能な開発目標)-貧困・社会的排除と居場所論」にある “SDGs” と “貧困” と “居場所” がつながった。“SDGs(エスディージーズ Sustainable Development Goals)”とは、2015年の国連サミットで、世界のリーダーにより採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)」の具体的内容だ。

SDGsの17項目の目標

17項目の目標は「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」など。国連がこの言葉を2030年までの世界の目標としてからは、社会を理解するためのキーワードとして注目を集めている。すべての国々に普遍的に適用される17の目標に基づき、各国は今後15年間、誰も置き去りにしないことを確保しながら、貧困に終止符を打つための取り組みを進めていくことになる。冒頭のピコ太郎の動画はその一環だ。

2030年、世界はこの目標を達成できるだろうか。それとも格差社会がもっと広がり、貧困問題はより深刻化しているだろうか。そこに私たちの居場所はあるだろうか。

〔前の記事〕
職場で評価されず家では邪魔者、“居場所”ある?

取材講座:「SDGs(持続可能な開発目標)-貧困・社会的排除と居場所論」(上智大学公開講座)
文・写真/奈良 巧

-教育・子ども, 教養その他, 講座レポート
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