ゼルダは上、マリオは横。ゲームの世界観で人間を理解

デジタルゲームの感性学(その2)@立命館土曜講座

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ムーンパトロールは疑似3D

もう1つの視覚的イリュージョンは、疑似3Dによる奥行きの表現である。

疑似3Dとは技術的には2Dだが3Dっぽく見せる技術のこと。遠近法や等角投影法は立体表現によく用いられ、私たちも経験上なんとなく理解できる。興味深いのはスクロールを活かして立体感を生むマルチプレーン・カメラという技法だ。

その好例が「ムーンパトロール」(画像1)。プレイヤーの乗り物が月面を走りながらジャンプしたり、ショットを打つ、横スクロール型のシューティングゲーム。道路と背景が流れることで乗り物が進んでいるように見えるのだが、画面が一番手前の地面、その後ろの山々の緑、さらに奥の山脈の3つのレイヤー(層)に分かれていて、それぞれのレイヤーのスクロール速度が異なることで、車窓から外を見ているような遠近感(イリュージョン)が生じる。

ムーンパトロール

ムーンパトロール

もともとマルチプレーン・カメラは、1934年にアニメーターのアブ・アイワークスが発明した技法。人間には、両眼の視差(パララックス)によって距離を測定する知覚特性があるため、視差を利用すれば、奥行きのイリュージョンを生み出せるのだ。

「スクロールや疑似3Dは古い技術ではあるが感性学的に見ると面白いのです。なぜならイリュージョンは人間にしか生じない。私たちは過去の経験から予測をしてしまいます。そのため画面の中の止まっている車が走っているように見えたりするのです。人間は情報量が少なくても、想像力でそれを補って楽しむことができるのです。その仕組みを突き詰めていくと、人間の知覚とは何か、人間とは何かを知ることに繋がるのではないかと考えています」

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取材:デジタルゲームの感性学ーイリュージョンと没入(立命館土曜講座第3204回)

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