スギ花粉症最新治療、始めるなら11月までに

お医者さんが教える「暮らしと健康」@昭和大学歯科病院

来年2018年はスギ花粉の飛散量が東北から関東甲信、四国地方までの広い範囲で、今年を上回る飛散量となる見込みだという。しかし憂鬱になるのはまだ早い。3年ほど前から始まった新しい治療法がよい成績を上げつつあるという。それが“舌下免疫療法”だ。昭和大学歯科病院で開催された公開講座「暮らしと健康」で、同病院内科クリニックの安藤浩一専任講師が詳しく紹介した。

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(左)昭和大学歯科病院 安藤浩一医師(右)花粉がいっぱいの杉

来年2018年はスギ花粉の飛散量が東北から関東甲信、四国地方までの広い範囲で、今年を上回る飛散量となる見込みだという。しかし憂鬱になるのはまだ早い。3年ほど前から始まった新しい治療法がよい成績を上げつつあるという。それが“舌下免疫療法”だ。昭和大学歯科病院で開催された公開講座「暮らしと健康」で、同病院内科クリニックの安藤浩一専任講師が詳しく紹介した。

スギ花粉に体を慣れさせて味方にする

昭和大学歯科病院内科クリニック(東京都大田区北千束)では、スギ花粉症の舌下免疫療法を開始している。これは舌の下の口腔粘膜からアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を吸収させて、身体を徐々にアレルゲンに慣らしていきアレルギー反応を起こしにくくする治療法だ。すでに昭和大学病院(東京都品川区旗の台)では2014年から始まっていたが、3年を経てその成果が現れ始めているという

今までの花粉症の主力治療は、抗ヒスタミン薬を飲んだり、点鼻薬をさしたりといった対症療法だった。しかし薬を飲んでいる時しか効かず、毎年再発するたびに薬を飲まなければならなかった。

一方、“免疫療法(減感作療法”は、アレルゲンを“敵”にするのではなく“味方”にし、スギ花粉に体を慣らしていくことで、スギ花粉によるアレルギー反応そのものを起こさないように体質を変えていくものだ。続けていくうちにスギ花粉にアレルギーを起こさなくなるケースも出ているという。

日本人の4人に1人はスギ花粉症

じつは今、日本人の約4人に1人はスギ花粉症だといわれている。スギの1本の木は成長すると50億くらいの花粉をつける。全国には100億本以上のスギの木があるといわれているから、ピーク時の2月から4月にかけては、まさに天文学的な量のスギ花粉が舞うことになる。

スギ花粉症の主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼の痒みなどだが、実はそうした明確な症状が出なくても、スギ花粉のアレルギーがさまざまな不調を引き起こしているケースがあるという。

たとえば、イライラしたり思考力が低下したり、夜よく眠れなかったり。こうした症状の裏にスギ花粉によるアレルギーが潜んでいることもあるらしい。

春先になると毎年このような症状に悩まされる人は、一度血液検査を受けてみてもよいだろう。

アレルギー症状が出る時期だけでなく3~5年にわたって服用

スギ花粉アレルギーそのものを治療しようという“免疫療法”だが、問題点のうちの一つは、治療期間が長期にわたるということだ。アレルゲンを連日投与し続け、最低3年は治療を続ける必要があるという。

今までの免疫療法では、アレルゲンを注射で投与する皮下免疫療法が主力だった。しかし、病院で注射をしてもらわなければならない皮下免疫療法では、通院や注射の時の痛みなど、患者の負担が大きかった。一方舌下免疫療法の場合は、最初の1回は医師の指導のもと医療機関において舌下投与が行われるものの、次回からは自宅で服用が可能となる。

最初の1回は病院で、翌日以降は自宅で毎日服用

舌下免疫療法は次のような手順で行われる。

問診、皮膚テスト、血清抗体検査などで、スギ花粉症かどうかを総合的に診断する。皮膚テストとは皮膚に杉のエキスを注入して反応を見る検査、血清抗体検査とは、スギ花粉に対する抗体の量を調べる検査である。そのほかの検査には、鼻の粘膜を調べる鼻鏡検査、鼻水の中の好酸球を調べる鼻汁検査などがある。ちなみに、舌下免疫療法を受けられるのは12歳以上の人だけだ。

初回投与は医師の指導のもと病院で服用する。これはアナフィラキシーショックなどを起こさないか、適切な手技で投与できているかなどを医師が観察するためだ。

服用の仕方は、専用のボトルで少量を舌下に投与し、2分間舌下に保持して、そのあと飲み込む。その後5分間は、うがいや飲食を控える。

翌日以降は自宅で毎日服用する。最初の2週間は徐々に増量し、そのあとは決まった量を数年にわたって、毎日舌下にプシュッとする。その間、少なくともひと月に1度は受診が必要となる。

なお、アレルゲンを体に入れるため、副作用としてアレルギー反応が出ることがある。そのため、服用する前後2時間は激しい運動を避け、アルコール摂取や入浴なども控える。これは、こうした行為をするとアレルギー反応が起きやすいためだ。また、舌の下が腫れたり、喉がかゆくなったり、頭痛が起きたりといった副作用が現れることがあることにも留意が必要だ。

始めるのは6月から11月までに

スギ花粉は早ければ12月か1月くらい、つまり冬のうちから飛び始める。舌下免疫療法はスギ花粉症の症状が出る前から始める必要があるため、昭和大学病院および同歯科病院内科クリニックでは、6月から11月までに始めることになっている。

このようにうまくいけば、アレルギー症状が治る可能性もある舌下免疫療法だが、現段階では全患者に効果が出るとは限らない。完治する人もいれば、症状が軽くなった人もいるし、効果が上がらなかった人もいる。また、メカニズムはまだ十分に解明されてはいない。舌下から入ったスギ花粉が体内で反応し、アレルギー反応を抑制する免疫反応が起こることで症状が抑えられると考えられている。

もともと鼻とか気管支には、呼吸とともに取り入れられた異物を排除する仕組みが備わっている。そこで、花粉のような異物を見つけて排除しようと、鼻水やくしゃみが出たりするのだ。

一方、口中は、食べ物を取り込むところなので、いろいろなたんぱく質を受け入れるようにできており、アレルギーを抑制する仕組みが備わっている。舌下療法はこのアレルギーを抑制する仕組みを利用した療法といえるかもしれない。

「年齢とともにアレルギーが和らぐことはあるのですか?」

スギ花粉症を患っている人が多い証拠だろう、講義後は質問が相次いだ。

質問者:「年齢を重ねるとアレルギーがやわらぐことはあるのですか?」
安藤医師:「個人差もあって一概には言えませんが、寛解して症状がある程度落ち着くケースはあるものの、アレルギーそのものが完全に治癒することは稀とされています」

質問者:「5月になると鼻水が出て困っています。イネのアレルギーではないかと思うのですが、ほかの植物についてもこの免疫療法は開発されていますか?」
安藤医師:「ダニ・アレルギーに対しては、指定医療機関において保険適応下で舌下免疫療法を受けることが可能です。そのほか、今後広くさまざまなアレルゲンについて開発されていて、今後ほかのアレルゲンについても商品化される可能性があります」

日常生活に多大な影響を及ぼすスギ花粉症。もし来春のスギ花粉シーズンに向けて舌下免疫療法始めるなら、11月までがタイムリミットだという。

◆取材講座:「暮らしと健康~お口の健康~」(昭和大学歯科病院)

取材・文/まなナビ編集室 医療・健康問題取材チーム 写真/(c)kai/ fotolia

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