佐伯氏のロボットイメージについての話が面白い
「ロボットというとなにを想像しますか?」と人に聞くと、40〜50代の人は「ドラえもん」という人が多いらしい。ドラえもんが生まれたのは1970年だ。それよりも上の年代になると、アトムだろうか。その他にロボットというと、有名なのは『スター・ウォーズ』に登場するC-3POとR2-D2のコンビ、それから『攻殻機動隊』の多脚戦車「タチコマ」。
記者などは『銀河鉄道999』にハマったクチなので、機械化人間のあれこれや、少女漫画家の清水玲子氏が描いたロボットシリーズなどが思い浮かぶ。しかし昔のロボットはどれも、自己完結型だ。それ1体で完璧な知能やパワーを持つ超人として描かれている。
しかし『スター・ウォーズ』のロボットコンビは、片方が莫大なデータを持ち、片方がさまざまな言語を操るというように、得意分野が分かれている。そして『攻殻機動隊』のタチコマは、AIで自律行動ができ、全機で互いにデータリンクして全ての記録を共有している。佐伯氏は、これは現在のロボット開発と近い形だという。つまりクラウドを利用している点だ。
クラウドコンピューティング、またはクラウドサービスとは「ネットワーク(特にインターネット)に接続されたコンピュータ資源(サーバ、storageなどの記憶領域、ミドルウェアやアプリケーション)を、それらの実態を意識することなくネットワーク経由で利用するコンピュータ資源の利用形態」とのこと。
たとえば、記者が利用しているクラウドサービスは、会計システム。ブラウザ上で数字をインプットするだけで、帳簿の作成や確定申告の準備ができる。こうしたシステムは、これまでは各パソコンに「帳簿ソフト」や「確定申告ソフト」をインストールしなければいけなかった。しかしソフトを持たずに、それと同等のサービスがネット上で受けられるのだ。これなら、パソコン自体の容量も機能も大して必要ない。必要なときに、必要なクラウドサービスを利用すればいい。
何百、何千のりんごを見てきたから判断できる
ロボットもクラウドを活用するようになってきているという。ひとつのロボットが、状況に合わせて「画像処理」「地図構成」「シミュレーション」などの機能を選択し、使用する。そうすることでひとつのロボットでできることが大幅に増えるという。
佐伯氏は「ほかのロボットが経験したことを、情報を共有することで違うロボットが活用することもできるんです。できることが格段に多くなります」という。
たとえば、私たちはりんごを見たとき、「これはりんごだ」と認識できる。それは今までに何百、何千ものりんごを見てきた情報を持っているからだ。ロボットにも同じ経験をデータとして与えなければ、どのりんごを見ても「これはりんごだ」と判断できるようにはならないという。そのため、ロボットをクラウドにつないで、あらゆるロボットが見たりんごを共有することで、1体のロボットはどのりんごを見ても「これはりんごだ」と判断できるようになる。
こうしたクラウドの技術で、ロボットの世界は急速に身近になった。Amazonがドローンを使った配送を検討しているというニュースがあったが、世界では自律移動ロボットがいくつも誕生しているという。
自動で商品の配達をするStarship Technologies
店舗で顧客の案内をするFellow Robotics
警備ロボットKinghtscope
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◆取材講座/「自律移動型ロボットとネットワークロボットの現在と未来」(明治大学リバティアカデミー生田キャンパス)
文・写真(講座風景)/和久井香菜子