通うまではこんなにやわらかくなかった
ストレッチ運動でひときわ目立っていたのが、この講座に通って4年目という原田さん。ほぼ180度開脚して上半身をべたーっと床につけていたのだ。このポーズ、How To本がベストセラーになり、今まさに憧れの的だが、原田さんはなんと71才!
「合気道を30年以上続けていましたけど、ここに通うまではこんなにやわらかくなかったんですよ。通って2年目に、駐車場で車止めに足を引っかけたんです。それまでなら間違いなく転んでいたけれど、ぐっと踏みとどまれて手もつかなかった。体が変わっているなと実感しました。60代後半から体が進化しているんです。通うごとに柔軟性も筋力も向上しているし、先生や受講生同士との会話も楽しくて、気持ちも若返ります」
7年前の開講時から通っている最古参の杉本さん(70代)は、講座日以外にも犬の散歩のついでにラダー(はしご状の器具でおこなうステップ運動)の練習をしているそう。
「足だけじゃなくて頭も使うんです。こっそり秘密特訓もしないと(笑)。以前、市のスポーツセンターに通っていたときはそこでしか運動しなかったけれど、こちらの講座に参加するようになってから、普段も体を動かすようになりました。楽しいし、成果を感じるからね」
肩をほぐすには突っ張り棒
ご夫婦で仲良く通っている土方さん(68才)と奥様(65才)は、それぞれ別のスポーツ教室に通っていたが、ここに落ち着いた。ご主人は学生時代はアメフトをやっていたスポーツマンだったが、社会人になってまったく体を動かさなくなってしまった。
「60才を過ぎ、健康のために運動をしようと、まず市のスポーツクラブに行ったんです。でも、女性ばかりで居心地が悪くて。続かなかったんですよ。ここは先に通っていた妻に勧められて来てみたら、男女半々でバランスがいいし、村井先生がアメフトのコーチと知ってうれしくて。通ううちに、上がらなかった肩がスムーズに動くようになりました」
「60歳からの体力再生健康体操」の講座で、肩をほぐす運動に使っているのが、突っ張り棒。あのびょーんと伸ばして、カーテンを吊ったりハンガーをかけたりする細くて白い棒である。この講座では、講師の村井剛先生(中央大学法学部准教授)が、さまざまな道具を駆使して指導するのがひとつの特色となっている。先生は、長さも簡単に調節できるし安いから、肩をほぐすには突っ張り棒が最適、と語る。
村井先生は、中京大学院体育学研究科を修了した体育学修士でもあり、バリバリのスポーツ指導者。先生によれば、60代までは日常的に運動をしていてもしていなくても、健康的に明確な差は出にくいという。しかし60代を過ぎると、運動をするかしないかでは死亡率に大きな開きが生じ、その差は年を取るごとに拡大していくという。だから、60歳以上の人こそ、運動が必要なのだ。
筋骨隆々な男子生徒も参加
奥様は、村井先生や大学のスタッフの熱心さに心を動かされたという。
「村井先生の人柄と教え方が素晴らしくて。わかりやすいし楽しいし、先生の影響でクラス全体の雰囲気がいいから、本当に通いやすいんです。それに、大学のクレセントアカデミーのスタッフもいいですね。ほかにもたくさんの講座があるのに、受講生一人一人の名前をちゃんと覚えていて、わからないことなどの相談にもきめ細やかに対応してくれます。こんなところはなかなかないですよね」
また、受講生がひそかに楽しみにしているのが、村井先生がコーチを務める中大アメフト部からやってくる学生アシスタント。
「アメフトで筋骨隆々な男子生徒と、マネージャーの女子生徒が代わる代わるボランティアで参加してくれるんです。ここは高齢者が多くて、普段若い人と交流する機会があまりないから、楽しいですね。男子部員が来たときは女性受講者が一気に華やぐし、女子生徒が来ればオジサンたちがニヤニヤ(笑)。これも楽しみのひとつです」(杉本さん)
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「60歳を過ぎても転ばないための健康体操」
〔楽しく体を鍛えるなら〕
[夏]60歳からの体力再生健康体操(60歳以下も可)
取材講座:「60歳からの体力再生健康体操」(中央大学クレセント・アカデミー2017年春期)
文・写真/まなナビ編集室