まなナビ

60(歳)代の学びと冒険

酔月さん(61歳)/埼玉県/最近ハマっていること:スペイン語学習

「60代の10年間をどう過ごすか、は重要です。順調ならまだ20年以上は生きられるはずです。でも70代になったら身体が動かなくなるかもしれませんし、病気になるかもしれません。さあ、まだまだ元気な60代をあなたはどう過ごしますか?」

60歳を過ぎても仕事は続けたい、と思っていたのが、この問いかけで考えが変わった。テレビだったか雑誌の広告や記事だったか、なんにせよ私は考え込んでしまった。そして意外にもあっさりと、よし引退しよう、新しい20年を始めてみよう、と決意した。

さて、ではどうやって新しい人生を味わいつくすか。全世界を旅してみたい、という若いころからの夢がよみがえった。ただ、持っているお金には限りがあるのでそんなにしょっちゅう旅に出るわけにもいかない。何よりも、この歳になっても世界のことを知らなすぎるではないか、と気づいたのだ。

そこで、旅先の国の歴史、地理、文化を学び直してから旅に出ることにした。現地で会話くらいできないといけないだろうから、これも学び直しだ。そう思ったとき、なんと膨大な勉強をしなければならないかと、かえって嬉しくなってきたのだった。

引退後、毎日の自由な時間に勉強のための時間を日課として入れ込んだ。第一回の目標はスペインへの旅にした。スペイン語講座を始め、各都市の概要を勉強し始めた。意識してみると、結構テレビで旅番組をやっていて、スペイン各地の情報も手に入ることがわかった。録画してじっくり観てみる。カテドラルが紹介されると、教会建築の歴史も調べなければと思った。グルメ情報やフラメンコなどの文化、美術館で見られる絵画や彫刻についても調べたくなった。こうして、学び直しどころか、知らないことがたくさんあってそれを学んでいくことがワクワクする体験となっていった。

ただ、欲張りすぎてもいけない。勉強は完成することがない。勉強を始めて一年たった時、とにかくスペインに一か月、旅に出ることにした。毎日が刺激的で感動的な日々だった。片言のスペイン語は何度か役に立った。「オラ」と「グラシャス」だけでも毎日使っていると現地になじんだ気がするものだ。宿の予約から宿にたどり着くまででもいろいろトラブルを経験した。地下鉄切符の買い方すらガイドブックに出ていたようにはいかなかった。まるで冒険だった。実際の旅で体験することが学びとなる。いくら事前に勉強しても、実際に体験しなければ身につかないものである。フラメンコを鑑賞し、絵画を鑑賞し、数多くの歴史的建造物を鑑賞した。地元料理を味わい、異国の香りを吸う。その場で感じることが大いなる学びとなることを知った。

一か月のうちには夜中咳が出て止まらない日が何日か続いたこともあった。現地の人に聞いて薬を買った。若いころより身体のもろさはやはりあるのだろうか。そうであればなおさら早いうちに次の冒険を考えねばならない、と思った。

今回使用したスペイン語に磨きをかける上でも、来年はスペイン語圏の中南米を旅してみようと考えている。今度は最低二か月の旅にチャレンジしようと思う。さあ、またいろいろ事前勉強しなければ。身体も鍛えておかなければ。私の60代はまだ始まったばかりなのだ。