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40歳を目前に始めた中国語

池乃 大さん(43歳)/京都府

 今から5年前、単なる思い付きで中国語を勉強し始めました。

 それまでは勉強とはあまり縁のない人生で、学生時代も成績は普通、社会人になってからも毎日が職場と家の往復でした。40歳を目前にし、このままでよいのかという思いがふとよぎり、たいした目的も無く語学でも勉強しようかと思い立ちました。中国語を勉強しようと決めた理由も単純で、アルファベットより漢字のほうがよく解るだろうと思ったためです。

 そのころたまたま近所に語学スクールがオープンしたので、迷わず申し込みしました。勉強を始めてみるとやはり想像以上に難しかったのですが、中国人の先生に励まされ、どんどんのめりこみました。中国通の同級生にも中国の文化や生活などを教えてもらい、それまでの人生で全く関わりのなかった「中国」に、物凄く興味を惹かれました。

 私は語学の勉強の延長で、中国の伝統行事を真似たり、中国の伝統芸術の吉兆花文字を描いてみたり、太極拳を始めたりと、どんどんチャレンジしていきました。私は子供の頃から何事にも消極的な性格でしたが、中国語学習がきっかけで物凄く積極的になったと感じます。

 それともうひとつ「学び」を通じて変わったことといえば、引っ込み思案だった性格が、人前に出られるようになったことです。これは、スクールの授業で発言することから始まり、ネイティブの中国人と中国語で会話するという経験を何度かした結果、自分から発信するというプレッシャーを乗り越えることが出来るようになったためです。会社の会議の席で発言することや、朝礼で皆の前で話すこと、最近では中国語歌唱コンクールに参加し、大勢の人の前で歌まで披露しました。これらはもちろん、5年前の自分では考えられませんでした。

 また、昨年は、念願だった上海旅行も経験しました。ツアーではなく自分でスケジュールを組み、カタコトの中国語で2泊3日の上海を堪能しました。残念ながらそれまでの4年間の語学力ではスムーズな日常生活とはいきませんでしたが、レストランでの食事、観光地での買い物、さらに言えば目的地まで電車で行くというだけでもカルチャーショックの連続でした。一番思い出に残っているのは、朝の魯迅公園で、たくさんの人がダンスや太極拳を楽しんでいる中、自分も中国人にまぎれて太極拳をしたことです。人見知りだった私が外国で見知らぬ人たちと太極拳をするなど、両親でさえ思いもしなかったことでしょう。

 5年間中国語を勉強してきて感じることは、今までわからなかったことがわかる喜び、できなかったことができるようになる楽しさ、そして何より、新しい世界への扉が開いたような感覚です。若い頃に、何故これらに気がつかなかったのかという悔やみもありますが、例え何歳になろうが「学び」は学ぶ者に新しい日常をもたらしてくれると感じています。学ぶことで新しい明日を迎えることに、今更ながら胸を躍らせる毎日です。

 

(編集室が文字の修正などをしています)