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3000回以上続いている京都の名物“土曜講座”とは?

「大学の街」、京都。市内にはいくつもの大学があり、人口の10人に1人が大学生だという。歴史がそこかしこに感じられることもあり、街中に「学問」が自然に溶け込んでいる、そんな京都に、連続実施回数3000回を超える名物講座がある。

ひと月も休むことなく続けられて

京都市北部に、金閣寺や龍安寺、仁和寺といった名刹を結ぶ「きぬかけの路」がある。“名物講座”は、この「きぬかけの路」の中ほどに位置する、立命館大学衣笠キャンパスで実施されている。

講座の名称は「立命館土曜講座」。一般市民も参加できる無料講座として、毎週土曜日に開催されている。2017年3月末時点で、実施回数はなんと通算3196回! 土曜日が月4回として、1年で48回。3000回やろうと思ったら……いったい何年かかるの!? 講座を担当する立命館大学衣笠リサーチオフィスの古瀬さんに尋ねてみた。

「立命館土曜講座は、1946年、戦後間もない頃に、末川先生によって始められました。それからひと月も休むことなく、土曜日(毎週のこともあれば隔週のことも)に開かれているんですよ」(担当:古瀬さん)

末川先生とは、立命館大学の名誉総長であった故・末川博先生のこと。そういえば、講座の会場も「末川記念会館講義室」である。

1922年創立の立命館大学は、教学理念に「平和と民主主義」を掲げている。彼は、戦後間もなく京都大学から立命館大学へと赴任し、その理念を守って発展させた。土曜講座の第一回目は、1946年3月、「労働組合法について」の演題で末川博によって始められた。

末川博先生

控え室にかかる『平和と民主主義』の扁額

梅原猛も白川静も

それにしても、休むことなく71年間!! 土曜講座3000回を記念して発行された『知のアトリエを求めて』(立命館大学衣笠総合研究機構、2011)には、実施されたすべての講座演題と講師の一覧があった。

法律、政治、経済、文学、歴史、美術や映画、広告などなど。演題は多岐にわたる。講師陣も立命館大学の教授だけでなく、外部の講師や民間からも名を連ねている。その中には、梅原猛や立命館大学に縁深い白川静の名もある。そんな著名な人々の講座も、すべて無料で市民に開放されていたのだ。しかも、事前申し込みが不要なので、思い立ったらふらっと行ってみることができる。

「『学問を通して人間をつくるのが大学である。大衆とともに歩き、考え、学ぶことが重要である』という精神に基づき、研究内容を一般の方にも聴いていただこうと、末川先生の意志を引き継いで講座を続けています」(古瀬さん)

この土曜講座には、立命館大学の精神や思想、受け継いできたものなど、いろいろなエッセンスが詰まっている。知の学び場として、血の通った学問をするために、市民とアカデミズムをつなぐ。そんなやりとりが毎週土曜日、この土地で繰り広げられているのだ。

各研究所が持ち回りで担当

土曜講座は、立命館大学内の各研究所が、ひと月ごとに持ち回りで担当していく。たとえば4月は人間科学研究所が担当する講座が4回開かれる。3月は、研究所ではないけれども、災害復興支援室により東日本大震災に関連する3講座が開催された(そのひとつが「大震災から住民主体の町づくりを成功させた奇跡の町」)。

一般の受講生を対象にしているから、門外漢であっても問題ない。講座が終わったあとに質問も受け付けているので、疑問に思ったことを聞くことができる。自由な空気のある講座だからこそ3000回以上も続いているのかもしれない。

〔あわせて読みたい〕 大震災から住民主体の町づくりを成功させた奇跡の町

〔おすすめ講座〕立命館大学土曜講座

〔大学のココイチ〕 末川記念会館の一階には、陪審室が再現されています。まるでドラマのワンシーンのような雰囲気に、興奮!

 

取材講座データ
立命館土曜講座 立命館大学衣笠キャンパス

2017年2月25日取材

文・写真/まなナビ編集部