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部下が新型うつ病……上司はどう対応すればいい?

仕事となると落ち込んで、まるでうつ病のような状態が続くのに、遊んだり好きなことをしている時は元気になる、これが「新型うつ病」だ。周囲の人からは「わがまま」「自分勝手」と見られがちだが、本人はつらさを訴え、職場を憎んで上司を攻撃してくることもある(「上司を攻撃、過食・過眠傾向なら新型うつ病の可能性も」)。このような新型うつ病らしき部下を持った時、上司はどのように行動すればよいのだろうか。心理学者で神奈川大学人間科学部教授の杉山崇先生に学ぶ。

できない理由を問いただしたりしない

新型うつ病は、自分に与えられた業務・立場・仕事などが自分の理想とするものではないことへのいらだちから生じる、いわば自己実現型うつ病だと、杉山先生は説く。新型うつ病の多くの人は職場や上司が大嫌いなため、時に上司はさまざまな攻撃にさらされることもある。

よくあるのが、「この仕事は僕のするような仕事じゃないんです」「僕の実力は正当に評価されてません」「あなたの言葉でひどく傷つきました」などの言動だ。
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しかし上司といえども中間管理職。「ちょっと扱いにくい部下だろうけど、なんとか仕事させてよ」と、さらに上の上司から言われれば、何とかするしかない。では、どうすればよいのだろうか。杉山先生によれば、上司と部下という関係の中で、この問題を解決しようとするのは難しいという。

「大事なのは、パワーハラスメントにならないように気を付けることです。やってもらうことはやってもらわないと仕方がないのですが、神経が過敏になっているので、『なぜできないのか』といったできない理由を問いただしたりしないほうがよいです。

部下の1人として、できるだけそつのない対応を心がけて、必要以上に触らない、というのも一つの対処でしょう。上司も時に〈逃げる〉ことが大事です」

それは、新型うつ病の人は、自分を被害者にしておきたいと考える傾向があるからだ。

自分のことを考えるのが苦手。時にプロの手も借りて

杉山先生によれば、新型うつ病の人は自分について考えることが苦手なのだという。そのために、自分を被害者という立場にまとめておくと安心するという。

しかし本人は、それで苦しんでいるのも事実だ。こうした新型うつ病を改善するには、具体的にどのような療法があるのだろうか。

「新型うつ病は一般的に薬物療法への反応性が悪いといわれています。あくまでも私の見ている限りではですが、カウンセラーと一緒に行動療法を行うことも可能性の一つとしてはあると思いますね。会社だけで何とかしようと思わないで、こうしたプロの手を借りることも選択肢に入れておいたほうがよいと思います」(杉山先生)

仕事に厭きがくる中年期も要注意

新型うつ病は若い人に多いといわれるが、けっして中年がならない、というわけでもないらしい。

中年期になると、体力が落ちたり、仕事に厭きがきたりして、「いつまでこんな仕事やってるんだろう?」と思うこともある。そこに望まない異動があったりすると、新型うつ病になる可能性があるという。

前の記事「ある感覚の欠如が40才からの会社人生を地獄化する」でも記したが、40代からの会社人生で大切になってくるのは、皆に支えられているという『おかげさま』の感覚。言葉にあえて出さなくとも心の中では周囲に感謝し、社会に感謝し、さまざまな体験を受け入れて、創造性を失わず、しかしどうしても我慢できなければ逃げることも選択肢に入れて生きていく、これこそ折り返し後の人生に必要な生きる知恵なのだ。

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杉山崇
すぎやま・たかし 神奈川大学人間科学部教授、心理学者
1970年山口県生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科にて心理学を専攻。医療や障害児教育、犯罪者矯正、職場のメンタルヘルス、子育て支援など、さまざまな心理系の職域を経験、脳科学と心理学を融合させた次世代型の心理療法の開発・研究に取り組んでいる。臨床心理士、1級キャリア・コンサルティング技能士。『ウルトラ不倫学』『「どうせうまくいかない」が「なんだかうまくいきそう」に変わる本』等著書多数。

杉山先生

◆取材講座:メンタルヘルス・マネジメント講座「大人の人間関係論 part2」(神奈川大学みなとみらいエクステンションセンター/KUポートスクエア)

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取材・文・写真/まなナビ編集室(土肥元子)