Q 認知症の予防に効果的と考えられる運動は次のうちどれでしょう?
A ウォーキング
B 階段を走って上り下り
C 腕立て伏せ、スクワットなどの筋トレ
現在、認知症の発症や進行を予防する方法として「確かに効果がある」とわかっているのが「運動すること」です。では、どんな運動がいいのでしょうか?
有酸素運動です。
65歳以上の高齢者にウォーキングやサイクリング、ハイキングなどの運動を行うグループと、行わないグループに分けて行った6年間の追跡調査によると、週に3回、1回15分以上の運動を行ったグループの認知症になるリスクが大きく低下しています。
よって、答えはAのウォーキングです。
すでにMCI(軽度認知障害)が見られる人にも、またMCI予防にももちろん有酸素運動は有効です。
有酸素運動とは、酸素を取り入れながらゆっくり少しずつ力を発揮する運動で、全身の血行をよくする効果があります。継続することで、生活習慣病の予防や改善につながり、それが認知症の予防・改善にも役立ちます。また、運動したあとは頭もスキッとして脳の働きが活性化する傾向が見られます。
有酸素運動のポイントは、軽く汗ばむ程度に体に負荷をかけることです。ウォーキングの場合、少し早足で軽く息がはずむぐらいがベストです。腕を大きく振り、歩幅も大きく、背筋を伸ばして颯爽と歩きましょう。一日30分程度を目安に、週3回で効果が望めます。
ウォーキングの時間が取れない人は、日常生活の中でなるべく歩くよう心がけてください。 たとえば通勤中、駅のエスカレーターや歩く歩道はなるべく使わずに歩く。ランチに外に食べに行くときは少し遠い店まで足を伸ばす。余裕がある日は、電車ならひと駅手前で、バスならひとつ手前の停留所で降りて歩きましょう。歩いていると、ふだん見慣れない風景や自然の移り変わりが目に入ってきて、脳によい刺激を与えてくれます。
ウォーキングのほか、なわとび、サイクリング、水泳も有効です。これらの運動も息が上がるほど激しく行う必要はなく、軽く汗ばむ程度で、長時間行うことがポイントです。
認知機能の低下が見られるものの病的ではない、グレーゾーンの状態であるMCI。認知症は防げないといわれてきましたが、MCIの段階で正しく対処すれば、認知症へ進行するのを防げる可能性があります。当シリーズではMCIを見逃さないための知識、認知症の予防策をご紹介していきます。 |
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あさだ・たかし 1955年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。同大学神経科精神科、山梨医科大精神神経科、国立精神神経センター武蔵野病院精神科、筑波大学精神医学教授などを経て現職。認知症の早期診断法や予防、リハビリに携わり、MCIの啓蒙活動を積極的に行っている。
文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ