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認知症と生活習慣の関係は?予防はいつから始める?

「えーっと今日は何日だっけ?」と何度もいうようになると黄信号といいます。認知症について、主に予防に関する情報を発信してきました。中でも関ご好評いただいたものをピックアップして3回に渡ってダイジェスト版でお送りする2回め。今回は生活習慣病との関係やいつから予防を始めるべきかについてです。

認知症の危険性を高める生活習慣病は…

近年の研究から、アルツハイマー型認知症と生活習慣病との間に、深い関係があることが明らかになってきました。

中でも深く関わってくるのが高血圧と糖尿病です。この2つによって認知症になるリスクは2倍になるとされています。このほか、高コレステロール血症も認知症のリスクを高めると指摘されています。高尿酸血症は痛風の原因になりますが、今のところ認知症の発症との関係は認められていません。

高血圧、糖尿病、高コレステロール血症。この3つに思い当たるものはありませんか? そうです、メタボリック症候群、通称メタボです。40歳以上の人は1年に1度、特定健診(メタボ健診)を受けていらっしゃると思います。これの検査項目が、高血圧(血圧)、糖尿病(空腹時血糖値)、高コレステロール血症(コレステロール値)ですね。

高血圧は脳梗塞や脳出血を引き起こす原因になります。それが前頭葉や前項葉など脳の精神的な活動を司る部位に発生すると、認知症につながる可能性が高いのです。

糖尿病はアルツハイマー型認知症の発症リスクを2倍に高めます。アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβという物質が蓄積することで症状が悪化します。健康な脳では、アミロイドβが蓄積しないよう、「インスリン分解酵素」というものがアミロイドβを分解してくれます。しかし、糖尿病の人はふだんからインスリンがたくさん分泌されるため、「インスリン分解酵素」はその対応に忙しく、アミロイドβの分解まで手が回りません。その結果、脳内にアミロイドβが蓄積してしまうという仮説が有力です。

高血圧、糖尿病など生活習慣病は、ふだんの食事や運動によって改善することができます。認知症予防の観点から言えることは、生活習慣病は高齢になってから治療しても効果が薄く、40代から65歳までの健康管理がきわめて重要であるということです。

(ひとくちメモ)◎診断はどのように行われる? アルツハイマー型認知症の人の脳をMRIで撮影すると、前頭葉と前項葉に萎縮が見られます。萎縮がはっきり見られる段階ではすでに症状がかなり進んでいるので、そのまえに早期発見、治療することが大切です。

認知症予防は、遅くとも40代から始めるべき

アルツハイマー型認知症を引き起こすと考えられているのが、「アミロイドβ」というタンパク質です。若いうちは体の中で自然に代謝されるタンパク質ですが、40代からだんだん脳にたまり始めます。

認知症予防策も、遅くとも40代から始めることが必要なのです。

予防策としては、まず運動不足の解消と食生活の見直しですね。軽い運動を1日1時間ぐらいできれば理想的です。食事の注意点は、基本的にメタボ対策と似ています。

「塩分や油っぽいものはなるべく減らし、野菜や魚介類を多めに」を意識することが大切です。

さて、「アルツハイマー型認知症」といいましたが、認知症とひとくちにいってもいろいろな種類はあり、その原因になる病気は実に70以上もあります。そのなかで、もっとも代表的なものが「アルツハイマー型認知症」で、認知症の約6割を占めています。

アルツハイマー型認知症の人は、記憶を司る脳内の「海馬」と呼ばれる部位が萎縮しています。そのため、はじめに現れる症状は「もの忘れ」です。日々の体験を覚えていない、約束を忘れる、新しいことを覚えられない、などといったことです。

次に「見当識障がい」という症状が見られます。これには、今日が何日かわからない、何年かわからない、今自分がいる場所がわからなくなるといった症状が見られます。

たとえば、「えーと、今日は何日だっけ?」「20日でしょ」というやりとりも日に1回だけならよくある話ですが、1日に何回もするようになると、認知症の疑いが出てきます。

このアルツハイマー型認知症の脳の萎縮の原因になっているのが、脳にたまった「アミロイドβ」なのです。なぜたまるのかは、今はまだわかっていません。

ちなみに、この「アミロイドβ」というタンパク質は肉や魚などの食品に含まれているわけではありません。食事から直接、体内に取り込まれるものではないのでご安心を。

(ひとくちメモ)◎認知症を診るのは何科?
認知症を専門にした診療科はありません。主に、神経内科、精神科、脳神経外科などが診ています。受診する医療機関の情報は、かかりつけの医師に相談し、紹介してもらうといいでしょう。かかりつけ医師がいない場合、各都道府県や自治体の「認知症コールセンター」「地域包括支援センター」に電話でたずねてみましょう。

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■監修■伊古田俊夫
いこた・としお 1949年生まれ。1975年北海道大学医学部卒。勤医協中央病院名誉院長。脳科学の立場から認知症を研究する。日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医として認知症予防、認知症の地域支援体制づくりに取り組んでいる。著書に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社)など。

[伊古田先生からのメッセージ]→「認知症予防とは、認知症を『先送り』することです」
認知症を「予防する」ということは、「一生、認知症にならない」ということではありません。認知症の原因は、今もわかっていないからです。確かなことは脳の老化だということ。ですから認知症を100%予防することはできませんが、発症する年を「遅らせる」ことはできます。いわば認知症の先送り。これが予防策をみなさんに広く知ってもらいたいと願う理由です。

文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ