受講生は日本人と外国人が半々
「インテリアデザイン入門」は同校の公開講座でも人気のクラスだ。ベルギー出身のBavo Willems(バボ・ウィレムズ)先生は、名門アントワープ王立芸術アカデミーを卒業後、ヨーロッパで建築を学び、ブリュッセルの美術館やスタジオデザインを手がけるなど、国際的に活躍する建築家のひとり。
講義では、インテリアデザインの基礎から、デザインが与える影響などを中心に講義。インテリアデザインを実際に学びたいという人や、建築やアートに興味がある人が受講しているという。受講生は日本人と外国人が半々ほどの割合だ。
10代の子供を含めた3人で2階建てアパートメントに住むと仮定して
その日のテーマは「Design the interior of a 2 floor apartment(2階建てアパートメントの家具をデザインしよう)」。住むのは「2 adults + 1 teenager」。10代の子供1人を含めた自分とパートナーの3人で生活する、2階建ての空間をデザインするのである。
講義スタイルは回によって異なる。この日はこのテーマについて、受講生が各人それぞれに課題を進め、先生がそれを個別にチェックして回るという方式だった。まず、決めるべきは「ロケーション」。田舎なのか、都会なのか、それともビーチサイドなのか、どのような場所にそのアパートメントを建てたいのかを決めていく。
「デザインを考える上で、まずはロケーションやコンセプトは重要な要素になります。例えば、一人の生徒は『毎日日の出が見られる場所に家を建てたい』と言っていました。そこをアイデアの起点として、効果的に日の出が見られる家にするにはどうしたらいいのかを掘り下げていく。その結果、『日の出を見るために、東側に2フロアぶち抜きの大きな窓を取り付けたい』などといったアイデアが出てくるので、家の概要が決まっていきますよね。玄関はどこか、階段はどこに置くか……といった、おおまかな家の間取りが決まったら、次は、どういう家具を置きたいのかを詰めていきます」(バボ・ウィレムズ先生。以下「 」内同)
「日の出が見たい」というコンセプトに沿って、ベッドは窓側に設置するのか。あるいは、日の出を見ながら朝食を食べるのなら、窓際にテーブルがあったほうがいいのでは……などといった、細かいインテリアのディテールに落とし込んでいくという。
実際に50分の1サイズで、インテリアの配置を具体的にイメージ
ある程度、大まかな図面を引いた後は、A3の大きな紙を折り曲げ、50分の1のサイズで家の模型を作り、室内の家具の大きさを決めていく。
「インテリアデザインは、空間との調和が大切です。だから、実際に立体で模型を作ることで、どのくらいの大きさの家具を置くのか、どういう生活導線を作るのかを具体的にイメージすることが重要になってきます」
つまり、講義中は漫然と英語の説明を聞いていればよいというわけにはいかない。先生と1対1で話さなければならないのだ。
「どんな部屋に棲みたいのか?」
「What kind of room do you want to live in?(どんな部屋に住みたいのか)」
と問われても、なかなか言葉が出てこない。ええっと、道路の音がうるさくなくて、できれば南向きで、カーテンは植物の模様がいいな、台所はとにかく収納たっぷりで……などと話そうとしても、頭の中が日本語→英語のパニック嵐。
「日常会話程度ならば大丈夫だろう……」とタカをくくっていたが、「自分の考えを英語で伝える」というのは、慣れていないと難しい。
でも大丈夫。ウィレムズ先生は返答につまる生徒にも、できるだけわかりやすい英語で話しかけ、返事を手助けしてくれる。
慣れと度胸と、英語で何かを学ぶ意志と
受講生の一人の20代女子大生は、「慣れてしまえば、英語のレベルは基礎レベルでも十分通用します」と語り、次のように話してくれた。
「私自身は、建築学を現在勉強しているのですが、『日本人の感性だけでなく、外国人の感性も学びたい』と思い、この講義を受講しました。私自身は、そこまで英語が得意ではないので、やや不安もありました。でも、先生が日本人の英語に慣れている方なので、こちらがわからないなりに、単語や簡単な英文でコミュニケーションを取ろうとすれば、すぐに質問の意図を汲んでくれますし、講義形式だけでなく、one to one(マンツーマンの意)で教えてもらう時間も多いのもありがたいです」
レベルよりも大切なのは、慣れと度胸と「英語で知りたいことを勉強するぞ」という意志だ。
インテリア用語がズラリと並ぶテキストは貴重
会社員として働きながらデザインを学んでいるという20代女性は、自由なスタイルが気に入っているという。
「高校・大学時代にアメリカで学んだので、日本のやや堅苦しい講義スタイルに馴染めなかったのですが、この講座は、先生から出された課題をきちんと時間内に終わらせられれば、講義中にコーヒーを買いに出るなど自由にしていてよいので、ありがたいです」
テキストも、先生手作りの本格的なもの。インテリア用語がズラリと英語で並び、欧米で家を買ったり借りたりするときにも役立つこと請け合いである。
このように専門知識を英語で身につけたい人はもちろんだが、記者のように、既存の英語学習に飽きてしまった人間にとっても、じつに興味深い講義だった。
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文・写真/藤村はるな