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若年性認知症の診断・発見が遅れるのはなぜ?

Q  65歳以下で発症する認知症が「若年性認知症」は、発見、診断が遅れやすいと言われています。その理由として、次のうち当てはまらないのはどれでしょう?

a 診断に必要な高度医療機器のある医療機関が少ないから
b 気になる症状があっても受診せずに済ませてしまう人が多いから
c 認知症の典型的な症状があまり見られず、診断の根拠が得られにくいから

患者数については、厚生労働省の最新調査が2009年と古いため、正確なところは把握できていませんが、およそ4万人と推計されます。

若年性の場合、高齢者の認知症とは違った問題があります。異変に気づいても、なかなか受診せず、早期発見しにくいということです。

「最近、ヘンだな」という自覚があっても、「過労気味だから」「ストレスかな」などと、一過性の症状と判断し、放置してしまいがちです。また、認知症特有の「無気力さ」、そこからくる「暇があれば家でゴロゴロしている」などの症状も、「認知症」を気づかせるには不十分です。「認知症は高齢者の病気で、自分には関係ない」という思い込みも受診を遅らせてしまう要因です。

また、若年性認知症では記憶の著しい低下よりも先に、ATMなどの機械操作能力や方向感覚の低下が目立ちます。一見して「認知症」とわかる典型的な症状が出そろうまでに時間がかかる傾向があります。そのため、ますます本人も周囲も「もしかして認知症?」とは思わないわけです。なお、若年性認知症の診断に必要なものは通常の診断機器と変わりありません。

よって、答えはaです。

認知症は生活習慣病やうつ病との関係が密接であることが明らかになっていますが、この傾向は若年性にも当てはまります。たとえば、生活習慣病をもっている人の認知症発生率は、そうでない人の約2倍高くなっています。

生活習慣病はその名のとおり、ふだんの生活から生じる病気。逆を返せば、ふだんの生活で改善することができるものです。認知症は100%予防することはできません。けれども発生を遅らせることは可能です。だからこそ40代になったら認知症予防を始めましょう。運動、食生活の見直し、新たな学びへの挑戦などなど。そのちょっとした心がけが、将来に、大きな違いを生むのです。

(ひとくちメモ)◎若年性認知症の患者数
年齢層ごとの認知症の有病率をみると、40代前半では人口10万人あたり14.8人。40代後半では27.1人とほぼ倍増。50代前半では51.7人、50代後半では115.1人と、こちらも倍々で増えています。近年、日本の若年性認知症の患者数は増加傾向にあると推定されます。

(「認知症、ならないために」は毎週日曜15:00更新予定)

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■監修■伊古田俊夫
いこた・としお 1949年生まれ。1975年北海道大学医学部卒。勤医協中央病院名誉院長。脳科学の立場から認知症を研究する。日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医として認知症予防、認知症の地域支援体制づくりに取り組んでいる。著書に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社)など。

[伊古田先生からのメッセージ]→「認知症予防とは、認知症を『先送り』することです」
認知症を「予防する」ということは、「一生、認知症にならない」ということではありません。認知症の原因は、今もわかっていないからです。確かなことは脳の老化だということ。ですから認知症を100%予防することはできませんが、発症する年を「遅らせる」ことはできます。いわば認知症の先送り。これが予防策をみなさんに広く知ってもらいたいと願う理由です。

文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ