老化とは酸化
芝浦工業大学公開講座「脳の老化ってどんなこと?~からだのサビが認知症を引き起こす!~」で、同大システム理工学部教授の福井浩二先生は老化のメカニズムを詳しく解説した。
芝浦工大と聞くと電気や機械の世界を想像するが、システム理工学部生命科学科は2008年に設立されたまだ新しい学科だ。福井先生もまだ40代、「脳の老化」の世界で多くの実績をあげる精鋭の研究者だ。
福井先生の話をひとことで表現すれば「老化とは酸化である」ということ。歳を取るごとに身体の細胞のあちこちが酸化して蓄積していく。それが老化だ。
酸化の身近な代表例が金属のサビだろう。「身体がサビ付く」という表現があるが、まさにその通りのことが起こっているわけだ。
なかでもサビの一番ひどいところが脳だという。
なぜ脳はサビやすいのか
もともと脳の細胞は酸化しやすい物質でできている。それに加え、考えることはもちろん、身体中の機能を司る脳は休みなく働き続けなければならないため、酸素消費量は身体のどの部位よりも多い。
人間の脳は体重のわずか2%にすぎないが、なんとその酸素消費量は身体全体の4分の1を占める。
その結果、他の身体の部位に比べ、脳の酸化は激しくなり、結果、脳の老化を招いてしまう。そして認知症をはじめとする脳の病気を生き起こすのである。
脳の老化を防ぐ、誰でもできる2つのこと
それでは「脳の老化」を防ぐにはどうすれば良いのか。
誰でもできる方法は2つ。
(1)抗酸化成分の含まれる食事を摂る。
カテキン(お茶に含まれる)、ポリフェノール(ウーロン茶、赤ワイン)、そしてビタミンCやビタミンEなどだ。そうすれば身体の中で酸化の進行を防ぐことができる。
(2)規則正しい生活をする。
生活のリズムの乱れは、身体の代謝機能やホルモン、神経のバランスを崩す。食事として摂るべき上記の抗酸化成分以外にも、人間は身体の中に酸化を防ぐ成分がある。それらを存分に働かせるためにも、無理をせず、規則正しい生活することが一番だという。
今までに最も長生きしたはフランス人女性のジャンヌ・カルマン。122歳まで生きた彼女は赤ワインとチョコレートが大好物だったという。どちらも抗酸化作用が高いのは偶然なのだろうか。
〔あわせて読みたい〕
初期の認知症が疑われるのは次のうちどれでしょう?
認知症の発生が急激に増える「魔の年代」とは?
糖尿病による認知症リスクで「2025年認知症700万人」
アルツハイマー。病変が出てから気づくまでに何年?
なぜ認知症の人は昔のことを記憶し今のことを忘れるのか
◆取材講座:「脳の老化ってどんなこと?~からだのサビが認知症を引き起こす!~」(芝浦工業大学公開講座)
取材・文/まなナビ編集室