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膝痛や腰痛で運動できない人向け認知症予防4ステップ

Q 膝痛や腰痛で運動ができない人の認知症予防策として適切なのは?

a 膝や腰が少々痛くても我慢して運動する
b 膝や腰が痛い人は運動しないほうがいい
c 膝や腰が痛くてもできるトレーニング方法を見つける

認知症の予防には適度な運動が重要です。しかし膝痛や腰痛のある人にとっては、運動はなかなか難しいかもしれません。特に40代以降は、膝や腰など関節のトラブルも増えてきて、だんだん歩くのがおっくうになり、運動から遠ざかってしまいがちです。運動不足は生活習慣病につながる大要因であり、認知症予備群への入り口です。

だからこそ運動をあきらめないでください。膝や腰に痛みがある人に適した運動方法があります。ここでは室内で簡単にできる運動をご紹介します。膝や腰に負荷をかけずに筋肉を鍛える「レジスタンス運動(筋肉に対して抵抗をかける動作を繰り返し行う運動)」です。

(1)椅子に座って足を上げます。はじめは片足ずつ、1回10秒間キープ。5回ずつ行います。慣れてきたら、両足をいっしょに上げ、5秒間キープ。5回行います。椅子には深く腰かけてください。

(2)椅子に座って、片足ずつ太ももを持ち上げます。片足ずつ10秒間キープ。5回ずつ。深く腰かけて、足の裏が床に着くぐらいがちょうどいい椅子の高さです。

(3)仰向けに寝て足を片足ずつ上げます。片足ずつ1回10秒間キープ。5回ずつ。

(4)仰向けに寝転がったまま膝を曲げて、お尻を浮かせます。1回10秒間、5回。

これで足腰の筋肉を鍛えることができます。膝や腰に痛みが生じない程度に行うのがいいのです。ということで、答えはcです。

運動の効果はさまざまですが、認知症予防の観点からみると、脳内に蓄積されてアルツハイマー型認知症を引き起こすタンパク質「アミロイドβ」を減らす効果があります。運動によって「血管新生因子」と呼ばれる物質が脳内に増え、血流がよくなるためと考えられます。また最近、運動中に筋肉から分泌される酵素に、血糖を分解する作用があることがわかってきました。糖尿病の予防にも運動は効果的です。

膝や腰に痛みがある人も、ぜひ毎日少しでもいいので運動を続けてください。たとえばラジオ体操の中で、できる動きだけ取り入れてもいいでしょう。小さな積み重ねが、生活習慣病と認知症の予防につながります。

(ひとくちメモ)◎レビー小体型認知症とは?
パーキンソン病の症状を呈する認知症です。「レビー小体」とは脳の神経細胞に現れるシミのことで、これを発見したドイツ生まれの神経学者、フレデリック・レビーの名にちなんでいます。症状の特徴として、気分の高揚と落ち込みの変化が大きく、高揚すると攻撃的になることもあります。また見えるはずのない人や動物が見える「幻視」症状もみられます。

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■監修■伊古田俊夫
いこた・としお 1949年生まれ。1975年北海道大学医学部卒。勤医協中央病院名誉院長。脳科学の立場から認知症を研究する。日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医として認知症予防、認知症の地域支援体制づくりに取り組んでいる。著書に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社)など。

[伊古田先生からのメッセージ]→「認知症予防とは、認知症を『先送り』することです」
認知症を「予防する」ということは、「一生、認知症にならない」ということではありません。認知症の原因は、今もわかっていないからです。確かなことは脳の老化だということ。ですから認知症を100%予防することはできませんが、発症する年を「遅らせる」ことはできます。いわば認知症の先送り。これが予防策をみなさんに広く知ってもらいたいと願う理由です。

文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ