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糖尿病になる危険大 避けたい3つの食習慣とは

こんな食べ方していませんか?

生活習慣が引き起こす2型糖尿病。最近は10代20代の患者も増えてきているという。今や国民病ともいえる糖尿病だが、引き金になるのはふだんの何気ない食生活だ。武蔵野大学薬学部教授の阿部和穂先生は、同大学の公開講座「糖尿病の基礎から治療・予防法まで」で、私たちの危険な食習慣を指摘した。武蔵野大学文学部3年生の山口杏菜記者がレポートする。

糖分が利用できなくなるのが糖尿病

糖尿病とはどういう病気なのだろうか。阿部先生はこう説明する。

「糖尿病とは、インスリンというホルモンの作用が足りず、血液中のブドウ糖(血糖)をうまく利用できなくなり、高血糖状態が続く病態のことをいいます。うまく利用するというのには主に2つあり、1つ目は骨格筋や脂肪細胞に取り込まれ、エネルギー源として利用されること。2つ目はブドウ糖の一部がグリコーゲンという多糖に合成され、いつでも使えるよう肝臓に貯蔵されることです。

糖尿病には、1型、2型、その他特定の機序(メカニズム)や疾患によるもの、妊娠糖尿病など、いくつか種類があります。1型は、自己免疫などによりインスリンを分泌する膵臓のB細胞(β細胞)が破壊され、インスリンの分泌が絶対的に不足してしまうもの。これは30才未満で発症することが多く、痩せ型の患者がほとんどで、遺伝性は低いです(自己免疫疾患が遺伝することがあるため、遺伝性が高いと誤解されている)。

2型は、膵臓のインスリン分泌能力が低下したり効きが悪くなるもの(インスリン抵抗性)。この2型が糖尿病全体の90%を占めており、30才以上で罹る人が多く、習慣遺伝との因果関係が示唆されています。肥満の人が多いですね」(阿部先生。以下「 」内同)

つまり2型糖尿病は生活習慣病だ。その引き金となるのが、多くの人が何気なくしている、3つの食習慣にある。

毎日している3つの食習慣が危ない

食べ物を食べると、腸から糖が吸収され、血糖値が上がる。それを感知して膵臓は血糖値を下げるためインスリンを分泌する。この働きがうまくいかないと、血糖値が高い状態が続く。

血糖値が高い状態が続くと、インスリンが処理できない糖が血管内にあふれ、体内のタンパク質が結びついて「糖化」という現象を起こす。糖化すると血管壁が傷ついたり細胞が劣化したりし、動脈硬化や老化を引き起こす。甘いものを食べると肌が荒れる、これも糖化が原因だ。

糖尿病にならないため、つまり体を糖化させないためには、血糖値を緩やかに上げ、緩やかに下げる、これが重要だ。しかしこれを阻害するのが、私たちがなにげなくやっている食習慣だ。それが、「ドカ食い」「だらだら食い」「早食い」である。

「ドカ食い」をするとインスリンの働きが間に合わず、血糖値がドカンと上がってしまい、あふれた糖で体が糖化する。暴飲暴食を繰り返していると膵臓からインスリンが頻繁に分泌される状態が続き、体がインスリンに対して鈍感になってしまう(インスリン抵抗性)。そうすると、食後にインスリンが分泌されてもブドウ糖が消費されなくなり、高血糖の状態が続いた末に糖尿病となってしまう。

では、バイキングなどで2時間くらい食べ続ける「だらだら食い」の何が悪いのか。2時間もだらだらと食べ続ければ結果として大量の食事を食べてしまう。結果、上の「大食い」と同じように、血糖値が高い状態が続いて糖化が進む。なお、後で解説するように、ゆっくり食べることはよいことなので、適量を時間をかけて食べたほうがよい。

では、さっと短時間で食事を済ませる「早食い」ならいいかというと、これも×。インスリンは、食事で血糖値が上昇し始めたことに反応して分泌されるので、いきなり食べ物をかきこむと、インスリンの分泌が血糖値の上昇に間に合わなくなり、ゆっくり食べる時より食後の血糖値が高くなってしまうのだ。さらに、早食いをすると脳が満腹感を感じないうちにどんどん食べ物を胃に入れてしまい、結果として「大食い」につながることが多い。

血糖値を上げない食習慣のポイントは?

糖尿病を予防するために知っておきたいのが、血糖値の上がるタイミングだ。血糖値がピークを迎えるのは、食後1時間ほど(人によっては45~90分)だといわれている。食後1時間の時間帯に甘いお菓子などを食べると、糖質が追加投入されて血糖値のピークが落ちず、高血糖状態が続いてしまう。その結果、糖化しやすい状況をつくってしまうというわけだ。

阿部先生は血糖値をあげないコツとして次の3つを挙げる。

食間を2~3時間以上あける
いつもより遅く起きて朝食をとった場合、お昼の時間になったからといって、無理に昼食をとる必要はナシ。食事と食事の間は、少なくとも2~3時間はあけよう。

空腹になってから適量を食べる。ドカ食いもだらだら食いは×
空腹を感じたときに食べるようにすれば、体に無理のない形で食事がとれる。しかし空腹になりすぎたり食間をあけすぎてしまうと、その反動でドカ食いをしがちなので要注意。バイキングなどは避けたほうが無難。つい食べすぎてしまうし、時間制限いっぱい胃に食べ物を詰め込んだりしてしまう。「ケーキは別腹」は糖化へ一直線だと心得よう。

ゆっくり、しっかり噛んで食べる早食いは×。
ゆっくり噛んで食べると、血糖値の上がり方が緩やかになり、糖化を防ぐことができる。また、満腹中枢が刺激されて少量でも満足できるようになり、自然にドカ食いが減ってくる。

〔学生記者の眼〕
薬学部教授の講義と聞いて、文学部の私が理解できるか不安だったのだが、実際は私たちの生活に基づく丁寧な説明でわかりやすい講義だった。年配の受講生が多かったが、身近な病気を正しく理解するためにも若い人たちにこそ聞いてほしい内容だと感じた。

◆取材講座:「糖尿病の基礎から治療・予防法まで」(武蔵野大学公開講座・三鷹サテライト教室)

取材・文・写真/山口杏菜(武蔵野大学文学部3年)

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