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死ぬまでに解決しておきたい4つのお金の問題

ファイナンシャル・プランナーの志村直隆先生

ファイナンシャル・プランナーの志村直隆先生 講座風景

人間らしく生きるためだけではない、人間らしく死ぬためにもお金は必要だ。「がん治療、在宅医療、死の前後で必要なお金の準備」と題した講座は、誰もが逃れられない超現実的なお金の話について学べる講座。

死ぬまでの約10年は医療や介護でお金がでていく期間

平均寿命、女性87.05才、男性80.79才(2016年7月厚生労働省発表)。世界トップクラスを誇る長寿国・日本だが、そんな私たちの命にもいつか終わりが来る。

命の尽きる直前まで元気でいられればいいが、ピンピンコロリは夢のまた夢、亡くなるまでの約10年間、多くの人が病気になったり体の機能が衰えたりして医療や介護のお世話になるのが現実だ。当然、それなりのお金が必要になってくる。

ファイナンシャル・プランナーの志村直隆先生は、高齢者にまつわるお金の問題を4つ挙げる。

医療費を確保するには、加入する保険の種類にも注意を

筆頭は「医療費」。

日本人の死因1位であるがんは、医療の目覚ましい発展で、共存しながら生きる病となった。診断されてから一定年数後生きている人のその後の生存率をサバイバー生存率というが、がんのサバイバー5年生存率は、1年生き延びれば20%アップ、2年で40%、4年以上になると80%以上にもなるという(国立がん研究センター調べより)。つまり、がんになっても初めの数年間、適切な治療でコントロールすることが何より大切なのだ。そのためにも、いざという時、お金に不安がない状態でしっかりがんと戦えるよう、可能ならば民間の医療保険や生命保険などで備えておいたほうがいい。

加入するがん保険の種類にも注意が必要だ。治療費・入院費を確保するため、がんと診断されたらすぐに保険金が出るタイプがおすすめだという。また死亡保障と入院特約がセットになっている生命保険は、死亡と同等に扱われる高度障害状態になった場合、保険金を受け取った後は入院保障が受けられないという落とし穴がある。つまり保険を味方にして生きようと思えば、保障内容も十分把握しておく必要がある。

自宅介護なら月約5万円、施設なら月約20万円が目安

次に「介護費」。

介護が必要になったときのために公的な介護保険制度が整備されているが、介護サービスのすべてが無料で受けられるわけではなく、要介護度によって受けられるサービスが決まり、さらに所得に応じて1~2割を自己負担するのがこの制度の仕組み。目安としては、自宅で介護を受ける場合なら月約5万円、施設に入るなら月約20万円を、介護費用として考えておく必要がある。

また、認知症を念頭においた準備も考えなければならない。自分の介護費用の捻出を始めとする財産の管理が、認知機能の低下により実行できなくなる可能性があるからだ。そんなときのために法的に支援する成年後見制度もあるが、信頼できる親族がいるのならば、志村先生はもっと簡易な手続きで家族間の財産管理ができるという家族信託を勧めた。家族間でも契約が必要となるが、公証役場などで手続きできる。

「私の葬式のセット内容は、もう決めてあるんですよ」と志村先生

標準的な葬儀費用は188.9万円

人が臨終を迎えると、即、容赦なく葬儀の準備が始まる。ここでもお金の問題は後回しにはできない。

現在、一般的な葬儀社での標準的な費用は葬儀188.9万円、墓が必要ならこれに加えてさらに203.9万円がかかるという調査がある。

「私の葬式のセット内容は、もう決めてあるんですよ(笑)」と、講師の志村先生自身の葬儀プランを祭壇や棺桶の写真などとともに披露した。事前に複数の葬儀社で見積もりを出してもらうことにより、葬儀費用がいくらかかるか、それは誰が負担するかなど、具体的に行動することで次々と課題が明確になってくるという。

もめるのは財産5000万以下のケース

そして、ある意味人生最後のお金の問題は「相続」。

「うちは財産がないから大丈夫」という財産5000万円以下の人たちが、もっとも壮絶にもめることが多いという。しかも相続のしくみを知らない・勘違いされていることが原因だという。

亡くなった人の財産を分け、納税するという一連の相続作業。「財産を残す人、引き継ぐ人がともに幸せな方法を、元気なうちに家族で模索しておくべき」と志村先生はいう。

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取材講座:「生命の終わりとは何だろう? がん治療、在宅医療、死の前後で必要なお金の準備」

文/斉藤直子 写真/まなナビ編集室