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日本は騒ぎ過ぎ? なぜ、韓国人は北朝鮮に対して冷静か

「韓国ドラマや映画を通して、韓国の諸文化に対して探ってみる」講座風景

2017年11月29日午前3時18分頃、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星15』の試験発射に成功。金正恩朝鮮労働委員長は、発射に立ち会い「核武力完成の歴史的大業、ロケット強国の偉業が実現された」と宣言した。繰り返されるミサイル発射のたびに緊張が走る日本とは違い、「韓国が日本ほど緊張してないのには理由があります」と、明治大学リバティアカデミー講師の兪仁淑先生は語る。

日本ではJアラートや列車の運転見合わせ

2017年だけで、2月12日の新型弾道ミサイル『北極星2型』に始まり、10回以上のミサイル発射に成功している北朝鮮。日本の排他的警戒水域にミサイルが何度も落下し、北海道上空を通過したこともあり、政府からのJアラートの広告が放送されたり、東京メトロなど一部の鉄道会社が列車の運転を一時見合わせたり、各地で住民の避難訓練を行ったりと、日本国内ではさまざまな動きが見られた。

2017年7月22~23日に行った「政治に関するFNN世論調査」では、日本国民の92.1%が北朝鮮に不安を感じると答えていたが、一方で、韓国民はなぜ、ミサイル開発を繰り返す北朝鮮に対して、危機感を持っていないのか、という声もある。

最大のヒット作は北朝鮮と韓国の兵士の友情

2016年の韓国ドラマ最大のヒット作である『太陽の末裔』は、主役のソン・ジュンギとソン・ヘギョが今秋、結婚。世紀のビッグカップルを生んだドラマとして話題になったが、兪仁淑先生は、「北朝鮮兵と韓国の特殊部隊の兵士の友情を描いた物語でもある」という。

物語は、主人公のユ・シジン(ソン・ジュンギ)が部下とともに、北朝鮮兵に捕えられた仲間の救出に向かうところから始まる。そして、乱闘状態になるも救出に成功。その後も、この時対峙した北朝鮮軍特殊部隊要員のアン・ジョンジュン(チ・スンヒョン)の危機を助け、また、間一髪で助けられるという出来事が展開され、南と北で対立する者同士でありながらも、ユ・シジンとアン・ジョンジュンが信頼関係を築いていく姿が描かれていく。

「“日本人は、ミサイル開発を繰り返す北朝鮮は危険。なぜ、韓国の人たちは平然としていられるのか?”と思うかもしれませんが、韓国人からみたら、北朝鮮の人々は同じ言葉を話す同じ民族なのです。だから、ドラマで“遠い友人”などと主人公が北朝鮮兵のことを語ると、南(韓国)の人はジーンとくる。同じ民族という意識が強いので、戦争をしたくない気持ちがあるし、まさか戦争になることはないだろう、と思っているのです」(兪先生・以下同)

2000年に公開された映画『JSA』も、南北の境界線のある板門店で向き合う、南北の兵士たちの交流の顛末を描いた物語だったが、兵士たちの友情に韓国民は熱狂。社会現象にまでなっている。

兄貴と呼んだりチョコパイを渡したり

「この映画では、北と南の兵士が板門店で向き合う中で、友情が芽生え、ある事件をきっかけに、互いをかばい合うのですが、南北の兵士どうしで、“ヒョン(兄貴)”と呼び慕ったりチョコパイを渡す場面などがとても印象的で、南の人たちは涙しました。北朝鮮の政権は確かに危ないかもしれませんが、北朝鮮の人民約2500万人は私たちと同じ民族。指導者たちとは別という思いがあるのです」

北に対する反感が必要以上に盛り上げられていないか

兪先生は、韓国の国民の戦争をしたくない、戦争にならないだろうという思いと、日本での北朝鮮問題の受け止め方に、温度差を感じている。
「北朝鮮の動向について、国際社会の中で、アメリカや中国や日本や韓国がどういうスタンスで動いているかについて、日本で冷静に受け止められているのかどうか疑問です。政府やマスコミから連日発信されている情報によって北に対する反感が、必要以上に盛り上げられていってはいないでしょうか」

1945年に分断され、世界で唯一「休戦中」である韓国と北朝鮮だが。だが『太陽の末裔』でも『JSA』でも、顔を合わせて言葉をかわして通じ合うことができるという交流が描かれ、韓国中が胸を熱くした。韓国の言語学者たちは、南北に分かれて72年が過ぎて近代化が進み豊かになった南と、貧困状態が続く北では、使用している言葉に違いが出てきてしまっていることに危機感を持っているという。南北に分かれて早72年が経過した今、同じ民族が離れ離れになっている韓民族の悲しみは、韓国の文化を理解する上で大きなファクターだと、兪先生は語った。

兪 仁淑
ユ インスク 明治大学リバティアカデミー講師。東海大学非常勤講師、関東学院大学非常勤講師。韓国の高麗大学校日文学科卒。中央大学文学研究科国文学専門博士課程修了後、2007年、博士学位 取得。専門は日本古典文学。

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◆取材講座:「韓国文化の散策「韓国ドラマや映画を通して、韓国の諸文化に対して探ってみる」」(明治大学)

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