自分の強みに特化しよう─経済学「比較優位」の概念
学びで結果を出そうとするなら、自分が強みをもつ分野を知り、そこに資源を集中させるのがよい。「でも強みといわれても……私は何をやっても他の人よりできないから……」と卑下することはない。自分の強みに特化することは、自身の利益のみならず社会全体の利益にもつながるのだ。これを裏付けるのが、経済学の「比較優位」の概念だ。
たとえば次のような例題で考えてみよう。書類作成・電話応対・支払い業務の仕事があるとする。チームには優秀なAさんと凡人のBさんCさんがいる。それぞれが1時間でこなせる仕事は次のとおり。
Aさんは、書類作成なら3つ、電話応対なら5つ、支払い業務なら5つ。
Bさんは、書類作成なら1つ、電話応対なら4つ、支払い業務なら2つ。
Cさんは、書類作成なら2つ、電話応対なら2つ、支払い業務なら4つ。
書類作成・電話応対・支払い業務ともにAさんがダントツ1位だが、もし3時間あって皆が分担しないで同じように仕事をしたらこうなる。
書類作成3+1+2=6、電話応対5+4+2=11、支払い5+2+4=11
しかし、Aさんが書類、Bさんが電話応対、Cさんが支払いに徹するとこうなる。
書類作成3+3+3=9、電話応対4+4+4=12、支払い4+4+4=12
ダントツに効率がよくなるのがわかる。自分の強みを知ることは、それだけ大きな効果を生み出すことになるのだ。
自分の好きなことに特化しよう─心理学「努力逆転の法則」
皆がやっているからといって、あまり興味はない資格をイヤイヤながら努力して取ろうとするより、自分に向いていて自分が好きだと思えることを楽しく学んだほうがはるかによい。「好きじゃないことでも努力して学べば何とかなるはず……」という人がなかなか成功しないのは、心理学の「努力逆転の法則」のせいかもしれない。
これは提唱者の名をとって「エミール・クーエの法則」ともいわれるもので、努力をすればするほどうまくいかなくなるというものだ。いやだなぁ…と思ってやっていると、いやなイメージが努力にまさってしまうのである。よくある「がんばればがんばるほど空回り」というものだ。
エミール・クーエの法則は次のとおり。
1.意志力と想像力(イメージ)が相反した場合は、想像力(イメージ)が勝つ。
2.意志の力で努力すればするほど、想像力(イメージ)は協力となり、その意志の努力とは、反対の結果となる。
3.意志力と想像力が相反した場合は想像力の強さは意志力の二乗に正比例する。
たとえば、明朝、重要な会議があるので、念のために早めに床に入り、眠ろう眠ろうと努力するのだが、努力すればするほどかえって眠れなくなる、といった経験は誰にもあるはずだ。
意志の力でいやな妄想(イメージ)を抑えようとすればするほど、そこに注意が向いて、意識が囚われてしまい、悪い結果を招いてしまうのである。
「好きこそ物の上手なれ」
これが学びの上達の極意なのだ。
やまかわ・ともこ 長岡大学経済経営学部教授
1995年新潟大学歯学部卒業、1996年歯科医師免許取得、1999年博士(歯学)。その後、初級システムアドミニストレータ―、医療情報技師、メンタルヘルス・マネージメントⅡ種・Ⅲ種など、さまざまな資格試験に合格、医学から心理学まで幅広く研究し、2008年より現職。医療情報システムの活用や医学・心理学に根ざした能力開発が主な研究テーマである。
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